ジキルとハイド~もう一人の自分
人間には、おもての顔と、裏の顔がある。
よそいきの顔をペルソナと言い、内側に隠された顔をシャドウとユングは呼んだ。
ご存知『ジキル博士とハイド氏』は、スティーブンソンの小説で、読んだ人は少ないかもしれないけれど、その物語のことは多くの人が知っている。
ひとりの人間の人格にある善と悪を、別々にすることができれば、完全なる善、完全なる悪を創り出せる。
そうすれば、善なる自分は、邪悪な自分に脅かされることはなくなる。
そんな事を考えたジキル博士が引き起こす悲劇。
精神疾患の診断としては、多重人格障害という名称がつくのだけれど、別に病気じゃなくてもだれにでも隠された裏の顔がある。
おまけに、それを全く意識していない人だってたくさんいる。
たとえば、先日も有名芸能人が、酒でやらかしてしまったのはまさにその裏の顔。
誰の中にもある社会性から外れた部分を、普段は抑制出来ていても、病気やお酒で自我が弱くなってしまうと、その裏の顔がするりと現れてしまうのだ。
Yは、男らしくてかっこよかったけれど、取り返せないほどの失敗をしてしまったわけです。
Yだけじゃなくて、誰にだって、一度や二度、思いがけない自分が登場してしまって、後になって後悔したことはいくらでもあるでしょう。
だからこそ、自分の内側に潜む邪悪なもう一人の自分の存在をしっかりと自覚しておかなければならないのです。
邪悪な自分を切り離す事なんかできっこないのであり、完全な善なる存在などこの世には存在しない。
だから、あの人は完璧だ、とか、あれほどの人格者はいないなどと尊敬されている人は、きっとそう思われるたびにものすごく葛藤しているに違いない。
お陰様で、私はそういった葛藤を味わわないで済んでいるのだけれど。
仏陀も悟りを啓くまでその苦悩の中にいた。
隠せば隠すほど、その邪悪なエネルギーはその力を増していく。
しっかりと認識して、正しいやり方でそのエネルギーを解放してあげるのが現代のセラピー。
三谷幸喜の『酒と泪とジキルとハイド』は、悲劇を喜劇にした小劇場スタイルの演劇。
ああやって、邪悪な自分を笑い飛ばしてしまうのもいいセラピーかもしれない。
完成できなかったのをごまかすために、ハイド役のする役者を雇ったものの、婚約者イヴがそのハイドを好きになってしまい、、、、
でも、思い込みの激しいイヴが飲んでしまったインチキ薬で目覚めた邪悪なイヴは、真面目で堅物のジキル博士の事が好きになり、と、舞台は大混乱で、客席は大爆笑。
でも、人生はそうはいかない。
「自分セラピー」は簡単な事ではないけれど、その第一歩は、邪悪な自分を切り離して完全な自分を目指すのではなく、善も邪悪も兼ね備えた自分を認めることから。
心の中はよほどのメンタリストでもなければ、誰にも読み取れない。
でも、自分だけは、心の中のつぶやきに耳をすますことができる。
なんだよバカヤロウ、も
フザケンナヨこのくそオヤジ、も
イイカゲンにしろこのババァ、も
あなたのもうひとりの人格が放っている言葉。
そんなことを考えた自分を責める前に、そういう自分がいることを素直に認める。
その自分を認めて、その邪悪な自分と向き合っていくことで、人格が成長していくのだ。
ウルトラマンシリーズも、『ゲド戦記』も、『ハリーポッター』シリーズも、『スターウォーズ』も、結局この邪悪な自分を象徴化した「悪」との戦い。
普遍的に、そう、誰もが興味のある分野なのです。
さて、あなたが自覚している邪悪なもう一人の自分、今、なんてつぶやいていますか?
僕の講座です。
自己分析メソッド - 柴崎嘉寿隆の未来創造塾/クエスト総合研究所