代書屋さんという仕事
昔、運転免許証の更新に鮫洲に行くと、周辺に「代書引き受けます」の看板がたくさんあったのを覚えている。
免許証更新に必要な様々な書類をかわりにタイプ打ちしてくれるので、助かっていた。
だから、代書屋という仕事はそういうものだ思っていたら、実は、手紙を代わりに書いてくれる、それも代理としてというよりも、依頼主の気持ちそのものになって、文字まで変えながら書き送る仕事があるのだということを知った。
本当にそういう仕事があるのかどうか定かではないのだけれど、小川糸さんの『ツバキ文具店』を読んで、いたく感激したのです。
糸さんの小説は、なんだか、読んでいるうちに時間の流れがとてもゆっくりと、そして丁寧に過ぎていく感覚を覚える。
以前読んだのは『食堂かたつむり』
失恋の傷心で声を失ってしまった主人公が、ふるさとの山間に帰って、小さな食堂を開くお話。
今回の『ツバキ文具店』は、厳格なおばあさんから引き継いだ鎌倉の文具店で代書屋をやっているお話。
どちらも自分の持っているものを押し付けるのではなく、その軸はぶれないまま、客の要望にとても丁寧に応対していく。
セラピストもそういう仕事の一つだろうか。
型通りのやり方にこだわったり、自分の考えを主張をすることなく、でも軸はぶれないまま、クライアントの心に丁寧に寄り添っていく。
どちらも心打たれる作品です。
是非一読を。
そして、セラピストの仕事にも、ぜひ興味を持ってみてください、ね。