コペル君とおじさん
このタイトルだけで、わかる人は、ははーん、あの本だなってことがわかるでしょうね。
『君たちはどう生きるか』
1937に新潮社から出版された16巻に渡る配本の最後に登場した児童書です。
そして今、漫画にもなってベストセラーを続けている。
いつか読まなくては、と気になってはいたものの、なかなか手にしなかった本の一つ。
読んでみて、噂にたがわず、子ども向けとは言いながら、学ぶことの多い物語でした。
コペル君は15歳。
父親を病気で亡くした彼と、おじさんとの間で交わされるノートが、智に溢れていてコ
ペル君だけでなく、ボクにも、多くの大人たちに気づきを与えてくれる。
コペルとは本名ではなく愛称なのですが、この不思議な名前のいわれは、読んで貰えば
わかるので省略します。
中学生のコペル君が、よくよく考えた事柄について、それをおじさんは心から承認したうえで、さらにその考察を広げる視点を与えてくれます。
ある時、友達と約束したことから逃げ出してしまったコペル君は、発熱をし学校に半月以上通えなくなってしまった。
体の具合が悪いだけでなく、友達を裏切ってしまった悔恨でいたたまれなくなってしまったのです。
自らに「裏切り者の汚名」をそそぎ続けたのです。
そんなコペル君に、おじさんは厳しく叱りながらも、そういった人間の弱さを伝え、そうした心の傷つきが一人の人間として成長するうえでどれだけ価値あることなのかと、やさしく慰め、励ますのです。
嘘をついたり、取り返しにつかないことをしてしまったり、自分がつくづく嫌になってしまうことは誰にでもあるでしょう。
どこかで過去の自分と照らし合わせながら、未完了だったその自分に光を注ぐような体験でした。
このおじさんのように、智にあふれ、丁寧に、そしてやさしく心を支えていける自分でありたいと、、、、。
学び多き作品でした。