29回グロースセミナー3日目その4
高原を走り下りる。
牧場が広がり、牛たちがのんびりと草を食んでいる。
「はい、ブレーキ!」
「はい、はなしてー!」
「はい、ブレーキ―!、止まりそうになるまでブレーキ!!」
「はなせ―」
これを繰り返し、1年生のMSKに、RNTに、MHRに叫び続ける。
力のない、小さな手で握るブレーキには限界がある。
次第に、手がしびれてきて、しまいには、スピードがどんどん出てしまう。
怖くなって、ペダルから足を話し、足ブレーキをしようとする。
とたんに、ハンドルがぶれる。
これまで何度、冷や汗をかいた事か。
ケガをする時は、一瞬だ。
しっかりと、ハンドルを握り、必死になっている姿には感動する。
大人になって、どれだけ「必死」になる事があるだろうか。
それでも、1年生のMHRも、RNTも、MSKも快調に下りていく。
昨年は、この急坂5キロに2時間を費やした。
順調だ。
下りが終われば、今度は上り。
こまめに給水しながら進む。
約1時間かけて、休憩ポイント。
全チームが無事にたどり着いていた。
たっぷりと休憩をしている間に、
「さあ、RNT、体温計るぞ!」
車に乗せ、体を冷やしてから体温を測る。
38.7度!!
「RNT、数字見えるか?」
みるみるRNTの顔がゆがみ、涙があふれ出す。。
「残念だけど、ここで、RNTは中断だ」
ひるめしーずのメンバーを呼ぶと、みんながここまでやり遂げたRNTを承認する。
そして、彼ら自身も、一緒にできない悔しさをかみしめていた。
RNTは、ただただ泣いていた。
悔しくて泣く。
それをみんなで悔しがって、一緒に泣く。
子どもたちの時間は、いつも今ここにある。
明日の事でもないし、昨日までのことでもなく、今ここに起きている事を全身を震わせながら味わう。
ボクが、大人が少しずつ手放してきてしまった大切なものを、今という瞬間を、彼らは、ここで感じているのだ。
グロースでは、こんなことを何度も体験する。
ボクたちの心の中の「子ども」をよみがえらせてくれる。
ここから、ボクは乗っていたMTBをサポーターのフミトに渡し、彼が運転していた軽トラにのり、RNTを助手席に乗せた、、、、のはいいのだけれど、、、・
なんとこの軽トラ、クーラーがない。
送風にすると、熱風が噴出してくる。
これじゃ、RNTがますますまずいことになってしまう。
RNTを別の車に乗せ、ボクがMTBチームの最後尾をその軽トラでのろのろと追いかけることに。
ウダルアツサデ、アヤウク ネッチュウショウニ ナリソウダッタ。
午後2時30分。
全チーム全員が、中央公園に到着。
やり遂げた満足感を味わい、みんなで承認をした。
横付けされている車の中では、病院から戻ったSOUが、爆睡中。
診断としては、熱中症ではなく、風邪の症状だという。
風邪薬と熱さましの座薬をもらったが、飲ませずに様子を見ることに。
すぐに車から出てきて、グループと一緒に昼の弁当を食べた。
午後3時半。
士幌高校へ向かう。
ここからは、SOUも一緒に参加。
農業高校で、最近は道内だけでなく全国から注目される高校になってきた。高校ブランドの野菜や肉加工食品などが有名だ。
ここの、どでかい農場で芋ほり。
農場は、無農薬。有機農法で作物を育てている。
今年のイモは、「わせしろ」
主に、ポテトチップにする芋らしいけど、もちろん普通に食べてもうまい。
高校の先生たちの指導でたっぷりと収穫し、次に向かうのは牛舎。
搾乳。
ひとりひとり手絞りの体験をさせてもらい、これから、いよいよ子どもたちだけのカレー作り。
食事担当のサポーターも、今夜だけはほんの少しだけ、
お休みできる。
さて、どんなカレーが出来上がるのか。