「自分軸で生きる」 

誰だって自分を知る旅の途中 だからこそ自分を知ることの楽しさを伝えるブログ

29回グロースセミナー3日目その2

朝食が終わり、今日これからやる実習を伝える。

 

ボクは、その日に何をやるのかを事前に伝えることはしない。

やる事は、やるときに伝える。

 

「次何やるの?」の質問には答えない。

 

それでも、なんとなく、今日がマウンテンバイクの実習であることが伝わっているせいか、初参加の子どもたちも、ソワソワしている。

 

「これからやることを伝える」

 

「うんうん」

 

「今日は天気もいい」

 

「はいはい」

 

「熱が少し高い子供もいるけど、食欲もあるようだし」

 

「うんうん」

 

でかい声でいちいち合いの手を入れてくるのは、RNT。

もうワクワクが止まらないって感じ。

だから子どもの純粋さがたまらなく面白い。

 

「うるさいRNT!黙って聞いてろ」

 

笑いが起こり、全員が、RNTの回復を喜んでいる。

 

「マウンテンバイクの実習をやります!」

やったー、と次々に歓声が上がる。

 

「それでも、この実習は、とても危険です。最初の5キロは急坂で、特に1年生はブレーキを握る力が尽きてしまう。スピードはいやおうなしに上がる。

足で止めようなんてしたら大けがをする。」

 

道を挟んで広大な牧場が広がっているせいか、その坂が緩やかに見えるのだけれど、坂は思った以上に急坂だ。

 

「それだけじゃないぞ、上り坂も幾つもある。おまけに疲れ切ってからの最後の道は砂利の道で、ハンドルを取られてしまう。街中で自転車に乗って楽しいっていうのとは全然違う」

少し大げさに聞こえるかもしれないけれど、ボク自身何度もヒヤッとした経験をしている。

 

「安全に、グループで協力し合って、中央公園まで30キロ走ります。」

「この実習をやるかどうか、話し合って決めてください」

 

子どもたちは、前のめりで話し合い、あっという間に、やんま、ひるめしの2チームが、「全員やります!」と返事。

 

ところが、まいまいと、やんまの2チームは、なかなか話が決まらない。

 

こういう時は、ひたすら待つ。

 

待って待って、話し合いが膠着状態になった頃を見はからってから、

「はい、全員注目」と声をかける。

 

決まっていないチームのリーダーに

「何が起きているのか教えて」と聞く。

 

JRA(4年)がやりたくないと言ってる」

「SOU(1年)がやらないと言ってます」

 

 

「チームのみんなはどうしたいんだ?」

 

すかさず、「一緒にやりたい」と返ってくる。

 

そこで、ひとりひとりにあらためて聞く。

 

最初は、やんまの1年生SOU。

「SOUはどうしたいんだ?」

言葉はない。

「やらないって聞いたけど、そうなのか?」

言葉はなく、うなづく。

 

「理由は?」

、、、、、、、

 

理由ははっきり言わないが、おそらく恐怖。

 

誰にも言わずに恐怖を心に抱えたまま、実習に向かうのはとても危険だ。

だから、言葉がない子どもにはていねいに聞いていかなければならない。

 

ようやく

「坂がこわい」という。

 

「まだ走ってもいないけど、やらないのか?」

SOUはうなづく。

 

ボクの中で迷いがある。

SOUは発熱がある。

 

チャレンジしないままあきらめさせたくはないけれど、体調の事もある。

ボクは、一旦それを受け止めることにした。

 

「わかった」

 

全員が、息をひそめるように成り行きを見守っている。

グロースに来る子どもたちは、こういう時にじれたり、茶々を入れて来ることがほとんどない。

一緒に集中して聞いている。

 

「次、JRA。」

「どうした?」

 

「やらない」

 

「理由は?」

 

「怖いから」

 

JRAは去年、相当怖い思いをして、急坂をなんとかやり遂げたな?」

「そして、今年はチャレンジするって決めてたんじゃなかった?」

 

「でも、やりたくない」

 

これも、29年やってきて初めてのケース。

かなり頑なになっている。

去年の恐怖が、記憶に残っているのだろう。

あまりにも怖くて、ブレーキをにぎる力も弱く、走り出すと自分では止められない。

7~10メートルずつ下りていった。

それでも、ブレーキが握れず、イントラやボクが、カラダで止めた。

5キロを降りるのに、2時間近くかかった。

 

「そうか、わかった」

JRAの気持ちも一旦受け止めることにして、それ以外の子どもたちに準備をさせる事した。

 

グロースでは「やらない」というのは、決めた事にはならない。

グロースだけに限らない。

「決める」というエネルギーは、能動的な事に対してその力が働く。

どんなに力強く「~しない」と言っても、それは、決まっていないのだ。

「二度とたばこを吸わない・・・」

「ぜったいにもうしません・・・」

これは、決めてはいないという事。

 

だから、2人にも、「やること」を決めてもらう。

マウンテンバイクに乗らない子どもがやることは、

クルマで伴走し、大声で応援すること。

「やるか?」

2人とも、力強くうなづいた。

 

子どもたちがロッジへ走っていく時に、ボクはSOUを呼び止め再度確認した。

「まだやっていないことを、君はやらないと決めたね?」

「せめて、出発前の練習だけでもやってみる気はないか?」

と聞くと、なんと、二つ返事で「やる!」という。

「それじゃ、一緒に準備してこい」

SOUは元気に走り去った。

 

JRAにも同じことを聞く。

彼女の意思は相当固いようだ。

それでも、練習はやってみるという。

 

一歩踏み出す。

そのチャンスを何とか作り出し提供する。

そして、最後は本人が決める。

いや、最後という言い方はおかしい。

いつも、その瞬間の自分が決めるのだから。

 

ともかく、二人は小さな一歩は踏み出した。

 

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ヘルメット、ひじあて、ひざあてを身に着け、周辺で練習する。

リピーターには、

「油断するな!気を緩めるな!」と念を押し、ときどきふざけている子どもには、

「こらーっ!」と、どやしつける。

その度に、子どもたちに真剣さがにじみ出てくる。

バイクに乗るためのフィジカルな準備だけでなく、これも、大事な心の準備の時間。

 

初参加組には、特に目を光らせる。

一人ひとり呼び出して、道路の坂で、ブレーキングの確認をする。

 

「はい、ブレーキ握る!」

「はい、離す!」

 

これを何度か繰り返し、その通りにやらせる。

 

SOUにもやらせてみる。

なんと、意外にも簡単にやってのける。

本人も、実に楽しそうに練習している。

 

SOUに再度確認してみる

「どうしたい?」

「やりたい!」と、即答。

「よし、でも、君は朝、熱があった。出発前にその熱の状態によってはやりたくても、やらせることは出来ない、いいか?」

SOUはうれしそうだ。

 

練習を十分にした子どもたちは、順番にロッジ前の階段にチャレンジする。

わずか、10段ほどの階段だけれども、初めての子どもたちにとっては、勇気がいる。

 

おっかなびっくりだけれども、やり遂げた時に訪れるほっとした気持ちと、気分は最高だ。

 

1年生も次々にチャレンジして、その度に歓声が上がる。

 

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でも、今度は中学1年のCHRのチャレンジが始まった・・・・・

 

・・・・・3日目続く