「自分軸で生きる」 

誰だって自分を知る旅の途中 だからこそ自分を知ることの楽しさを伝えるブログ

書かずにはいられない、、『銀の匙』 中 勘助

最近、小説を読みまくっている。

 

出会う本、出会う本、それぞれに面白く、豊かな気持ちなる。

 

でも、この衝動は、きっといろんなことを考えないための逃避なのかもしれないとも思う。

 

その逃避した世界には、この現実にはないファンタジーが色鮮やかに存在している。

 

現実では考えられないような世界ではあるけれど、こちらの現実世界でも、とんでもないことあり得ない様なことが日々世界中で起きている。

 

そんなことを考えていると、どちらが真実の世界なのか、もはや判別ができなくなってしまう。

 

幼いころ見ていた世界を覚えているだろうか。

 

近所のお姉ちゃんが路地裏に咲くつつじの花弁を取ってその蜜を吸わせてくれたこと。

恐る恐る口に入れると、甘かった、

いとこと一緒に、近所の悪がきを木戸を締めて閉じ込めて、勝ち誇ったこと。でも、閉じ込めたところが自分の家で、中に入れなくなってしまったこと。

お母さんがいないことに気付いて、慌てて靴も履かずに外に飛び出して、ぬかるみに足を踏み入れたときの感触。ニワトリがコケーッ、コケーッと騒いでいた。

 

中勘助であれば、たったこれだけのことを、何ページにもわたって書き表してくれただろうに。

 

そのときの、空気、色合い、取り巻く世界、息づく命、内側に起きている心の動き、そこから見えて来る初めての世界、などなど。

 

銀の匙』には、幼い目が見て、聞いて、感じたことがとてつもない表現力で描かれていた。

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夏目漱石が絶賛したと言われる

ものがたりの展開を追いかけてばかりいるボクの乱読は、この小説の世界にどっぷりと浸り、しばし前に進むことを止めてしまった。

 

ボクの幼いころも、こんな世界を見て、こんな世界を感じていたのだろうか。

そうあってほしいと、切に思う。

 

「人びとは多くのことを見慣れるにつけただそれが見慣れたことであるというばかりにそのままに見過ごしてしまうのであるけれども、思えば年ごとの春に萌えだす木の芽は年ごとにあらたに我らを驚かすべきであったであろう、それはもし知らないというだけならば、我我はこの小さな繭につつまれたほどのわずかのことすらも知らないのであるゆえに。」

 

主人公の少年が、繭を育てそれを観察し、その一生をくまなく見続けた様子の一節にある文章だ。

 

ボクたち大人は、この純粋な目をどこかに置いてけぼりにしてしまっているのかもしれない。

第30回グロースセミナー5日目完結編

最終日の朝は早い。

10:30には、ヌプカを出発しなければならない。

 

6時起床

 

子どもたちが集合するまでに、イントラは毎朝ミーティングをする。

気持ちを引き締め、気持ちを一つにして、その日をスタートさせる。

 

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イントラチームの朝

ロッジやBBQハウスの清掃を全員で終えて、いよいよ出発前の最後の実習は、

ミドルネームの宣言。

 

自分の夢を実現するために、自分を力づける言葉を、苗字と名前の間に入れる。

 

あきらめない

自信を持つ

前に進む

などなど、自分で考えて名前を決める。

 

そして、ひとりずつ、十勝平野に向かって、大きな声で宣言する。

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ミドルネーム宣言


 

さて、順調に進んでいたけれど、ASTのチームが始まらない。

 

どうやら、初参加の4年生NKのミドルネームが決まらないらしい。

 

しばらく待っていたものの、出発時間が迫ってくる。

やむを得ず、ボクが直接かかわることに。

 

NKは、うつむいて泣いている。

 

「どうした?」

 

「・・・・・・・・」

 

リーダーのASTをはじめ、チームでサポートはしているものの、NKの反応はなく、泣くばかりだという。

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NKにじっくりと寄り添い、ようやく聞き出した答えが、

「やりたくない」

だった。

 

「理由を教えてくれるか?」と言う問いかけにしばらくたってから

 

「恥ずかしいから」らしい。

 

この「恥ずかしいからやらない」というところからNKは一歩も動かない。

 

「みんなの前で、大声で叫ぶ」のは、確かに「恥ずかしいこと」なのかもしれない。

でも、恥ずかしさの後ろ側に「本当の気持ち」がある。

 

「本当の気持ち」に気づかないことは、大人のボクたちだっていくらでもある。

 

「恥ずかしいからやらないということは、恥ずかしくなければやるということ?」

 

NKは泣いたまま答えない。

 

「そうか、それじゃ一つ教えてくれ。

NKは、今みたいに泣いてやりたくないっていう気持ちになることは、普段もあるのか?」

 

しばらく考えていたNKはうなづく。

 

「そんなとき、どんな自分だったらいいなと思う?それをミドルネームにしてみたらどうだ?」

 

無言だったNKは、しばらくすると、「考えが浮かばない」と言う。

 

「じゃあいくつか、アイディアを言うから、その中にあるかどうか考えてみて」と伝える。

 

NKは、その中から、

「決められる人」を選んだ。

 

もちろん、ここまでにもうだいぶ時間は経過している。

 

「NK,、じゃあ、それを今ここで言えるか?」と聞くと「うん」とうなづく。

 

「NKの大事なチャレンジだから、みんなにも集まってもらうけどいいか?」とNKに確認してから、全員を呼び寄せる。

 

NKの周りに、子どもたちやスタッフが彼女を囲むように集まる。

「さあ、NK、その『決められる人』をミドルネームにして言ってみよう」

 

「・・・・・・・・・・〇〇 決められる NK」

 

ものすごく小さな声だけれど、自分の声で言えた。

 

ミドルネームはお決まりで、3回言うことにしている。

 

「もう1回」

 

「・・・・〇〇 決められる NK」

 

「もう一回」

 

「〇〇 決められる NK」

 

3回言い終えると、全員から大きな歓声と拍手。

 

「恥ずかしいからやりたくない」NKは、結局全員の前で宣言した。

 

NKが踏み出した一歩は、きっと彼女の心に大きく刻まれたはずだ。

 

このミドルネームで、グロースセミナーのすべての実習が完了。

 

30回目のグロースも、無事に終えることができました。

 

4泊5日

残念だけれど、子どもたちのチャレンジの一つ一つを紹介しきれない。

各チームに起きたドラマもたくさんある。

そのドラマが、子どもたちの心の中で生きて育っていってもらえることを、心から願う。

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ロッジヌプカ前で。

 

ロッジヌプカの皆さん、

士幌高校や、士幌農協、士幌交通を始め、ご橋梁頂いた士幌町のみなさん、

保護者の皆さん、

スタッフ、

士幌のオヤジ

 

すべての方々に、感謝します。

ありがとうございました。

 

また、来年を楽しみにしています。

第30回グロースセミナー4日目その4

子ども未来研究所にはビジョンがあります。

 

「子どもたち一人一人が自分を認め、お互いを認め合う世の中を創り出していく」

こと。

 

「認める」「認め合う」と言うことの意味は、単にその子をほめることとは違います。

 

「ほめて育てる」のはよく知られています。

 

ほめることは、

親が子どもを、

先生が児童を、

先輩が後輩を、

上司が部下を、

と言った、目上の人が目下に対して与える評価。

 

「えらいぞ」

「よくやった」

「すごい」

「いいねぇ」

 

でも、同じことをしても、人によっては褒めてもらえないこともあります。

「ダメじゃないか」

「それはよくない」

「全くできてない」

などなど。

それは、人にはそれぞれの価値観があって、その価値観にあっていればほめてもらえるし、あっていなければほめてはもらえないから。

 

だれだって、ほめられれば気分はいいでしょう。

脳科学者の茂木健一郎さんによると、ほめられると、脳内のドーパミン(脳内の快感物質)がどっと溢れるらしい。

だから、ほめられると気持ちがいいから、またほめてもらいたくなる。

反復運動が始まるので、しつけにとてもいいというわけです。

 

こうやって、よい行いや、よい考えを増やすことで子どもを育てていくのは理にかなっています。

でも、ひとつ懸念があります。

子どもは最初は、ほめられたくてしたわけじゃなかった。

自分が「したくてしていたこと」をほめてもらえたことで、その快感を得るために「ほめてもらうためにすること」になってしまうことです。

お母さんに喜んでもらえればさらにうれしいですからね。

 

つまり、行動や思考の基準が、「自分」から「他者(親や先生、目上の人)」になるということ。

これは実は大変なことです。

 

ボクが、30代に入るころまで、ずっと基準は「自分以外」にありました。

そのことでたくさんほめられることもありましたが、自信はいつまでたっても身につかない。

そりゃそうですよね。

自分に基準がないわけですから。

自立する、と言うことを、何でも一人でできる様になること、と考えていましたから、評価の得られないことは次第にできなくなってしまうのです。

 

自分軸を創る、

これが、グロースの大命題です。

 

だから、繰り返し

「おまえはどうしたいんだ?」

と、子どもたちに問いかけていく。

「どうしたらいいですか?」ではなく、「自分はこうしたい」と発言するようになるためには、「ほめる」のではなく「認める」ことが大事だと考えるのです。

 

この認めるということを、グロースでは「承認する」と言う言い方をしています。

 

前置きが長くなりましたが、4日目最後は、キャンプファイヤーを囲んで、この「承認」の時間です。

 

ラストイヤーのAST、YK、TKH、3人が点火。

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キャンプファイヤー

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火を囲んで全員が座り、チームのイントラが子どもたち一人一人を順番に承認していきます。

夜空には満天の星。

夏の大三角形も、白く帯状に流れる天の川も、はっきりと見える。

 

暗闇に燃えるキャンプファイヤーの炎が、子どもたちの顔を優しく照らします。

 

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承認の時間

イントラは、4日間その子と行動を共にして、感じたことを丁寧に伝えていく。

 

一つ一つの言葉に、笑みが浮かんだり、時には涙が浮かびます。

 

最後にボクが、

「〇〇と一緒にグロースに来て、うれしかった人―!」

 と聞くと、

 

「ハーイ!」

 

子どもたち全員の声が高原に響き渡ります。

 

あたたかで、やさしくて、4日間をやり遂げたお互いを認め合う、とても素敵な時間です。

 

最後に、イントラ、サポーターたちからもひと言ずつ。

「グロースを愛しています!」

「一生、サポートし続けるから!」

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貢さん、冨さん、本当にいつもありがとう

士幌のオヤジの貢さんと、富さんの、このグロースへの純粋で、ものすごく熱い想いに、思わず涙してしまう。

 

最終日の明日は、早く起きて帰り支度。

 

そしてその前に最後の実習。

 

明日が最後のブログです。

第30回グロースセミナー4日目その3

グロース4日目その3

 

「一番楽しかった実習は?」と聞くと、人気があるのがマウンテンバイク、そしてそれと同じくらい「サポーターゲーム!」と答える子どもが多い。

 

この実習の目的は、4日間で培ってきた「チームの一体感」や、「チーム力」を実感していくこと。

高原全体を使い、いくつかのポイントをチームでクリアしながらでゴールを目指す。

ロールプレイングゲームのようで、一つをクリアするたびに高原に歓声が響き渡る。

もう一つ目的がある。

それは、サポーターとの交流だ。

イントラは、常に子どもに同行して実習を行うが、サポーターは、バックアップなので、なかなかそうはいかない。

各ポイントには、サポーターが待ち受けていて、彼らが問題を出しそれをクリアして次のポイントに進む。

 サポーターとしても、子どもたち一人一人と直接かかわれる、貴重な時間だ。

 

スタートは、いつも食事をするバーベキューハウスで、ボクが問題を出す。

 

今年の問題は、これ。

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サポーターゲーム

このジグソーパズルを完成させると1か所だけピースが足りない。

それが一体何で、その正式名称は何か、が問題。

 

「よーい、始め!」

 

その合図で、4チームが一斉に組み合わせ始める。

 

初めは全体像が見えないけれど、次第にそれがこのヌプカ全体の地図であることがわかってくる。

 

低学年も嬉々として取り組んでいるが、これが結構難関。

 

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ようやく出来上がっても、ピースがひとつ足りないし、その場所の正確な名称がわからない。

 

「あっ、そうかわかった!」と大声を出して、

「ほかのチームに聞こえちゃうから静かに!」とリーダーに叱られたり、

「できた!」と言って、ボクのところに来てもその名称を正確に言えずにまた戻されたり。

 

正解が言えると、

「やったぁ!」と叫び、大急ぎで5つあるポイントに向かっていく。

 

残されたチームは焦り、ますます混乱する。

大逆転もある実習なので、みな興奮気味だ。

 

最後のチームが正解して出ていくと、途端にBBQハウスはしーんとする。

 

後は、子どもたちだけで、行動していく。

 

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サポーターとの交流

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リーダーは、サイズの小さいMTBで急坂を上る

子どもたちがゴールする、高原の一番てっぺんで、今夜は野外BBQの準備が始まっている。

 

山下のオヤジも得意の焼きそばを披露してくれる。

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BBQ、最高の景観

 

16:00 全チームがゴール。

 

BBQが始まるまで、居眠りおじさん(子どもたちが好きなネイチャーゲームの一つ)をやったり、高原の坂を走り下りたり、思い思いに過ごしている。

 

BBQはサンテナーをひっくり返して椅子代わりにする。

毎年チームごとにまとまって食べるのだが、今年はなんだか違う。

 

「オレたちリーダー4人でもっと話をしたい。

でも、チームとも、もっと話したい。

だから、こういう形にした」

リーダーのYKが言う。

 

中央に4人のサンテナーが置いてありその一つずつの周りにチームのサンテナーが置いてある。

まるで四葉のクローバーのよう。

 

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全員がまとまって座り始めた

面白いアイディアだし、みんなと一緒にいたい、と言う気持ちがひしひしと伝わってくる。

 

もう少しでBBQの準備が整うというときに、「パプリカ」が始まった。

 

この4日間、何かと彼らはこの歌をみんなで歌っていた。

 

*YOU TUBEへのリンクです。音が出るので周囲に気を付けてください。

 

https://youtu.be/4T4-sUcovUY

youtu.be

 

これを見るたびに、「あの時」がよみがえる。

 

わずか4日で作り出してきたチームシップに感動する。

 

始まったBBQは、もちろん、サイコーにうまかった。

 

最後はキャンプファイヤーと承認の時間。

第30回グロースセミナー4日目その2(8月3日)

4日目は、高原実習。

ヌプカに滞在していながら、この高原を飛び出して実習をしてきた。

カラダも疲れているし、4日目はゆったりと高原で過ごす。

 

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午前中は、二つの実習。

ネイチャーゲームとアート。

 

ネイチャーゲームは目隠しイモムシ。

目隠しをして前の人の腰に手を当てて縦一列につながる。

先頭のイントラが、後ろに連なる子どもたちを引き連れて、高原の中を歩き回る。

 

時には、小さな岩をよじ登らせたり、ほんの少しだけジャンプさせたり、また座らせて草の感触を味わわせたり、

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目隠しイモムシ

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目を閉じることで、子どもたちのイマジネーションが広がっていく。

高原のあちこちで、小鳥のさえずりとともに、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくる。

 

日常生活で、長時間(この実習ではおおよそ30分)、目を閉じたままで行動することはない。

 

目隠しを解いた後、どの道を歩いたのかを全員で探す。

嬉々として高原を走り回る子どもたち。

遊びながら、子どもたちの感性がどんどん磨かれていくように見える瞬間だ。

 

 

もう一つの実習は、十勝平野を見下ろせる場所からアート。

「見渡す限りのすべてが自分の国で、自由にできるとしたら、どんな世界を創りたい?」

 

こんな問いかけをして、画用紙いっぱいに絵を描く。

 

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アートタイム

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アートの表現の目的は、評価ではなく

 

「雲がきれいだからこのまま残したい」

「はなのくに」

「自然を残したまま、地下に高速道路をつくる」

「誰もケンカしない国」

「いい気持ちになれる国」

時には、

「戦いの騎士がゾンビと闘って」

いたりする国もある。

 

アートは、言葉以上にものがたりを語ってくれる。

イマジネーションを育てることは、見方を変えることのできる柔軟性が身についていく。

問題への対処だったり、人間関係、人への思いやりも、このイマジネーションの力が影響する。

何よりも、自尊感情を高め自分を好きでいられるためには、とても大切なものなのだ。

 

子どもじみた考え

子どもっぽい

 

と、「子ども」と言う単語を揶揄するように使われることがあるけれど、ボクたちの「心の中の子ども」を追いやってしまうことが、どれほどボクたち自身を苦しめてしまうことか。

たとえそれが非現実的であったとしても、その子どもの心の物語に耳を傾けることは、ボクたち大人のイマジネーションを育ててくれる、とても大切なことなのだ。

 

午前中の高原実習を終えて、いよいよ午後は、子どもたちが大好きな「サポーターゲーム」

 

続く

第30回グロースセミナー4日目その1(8月3日)

快晴

 今日も暑くなる。

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ヌプカの空

8:00起床、8:20分集合

起床してから集合まで、20分しかないのだけれど、この時間も、子どもたちが決めたこと。

彼らは、目が覚めてから、大急ぎで準備をしてロッジ前まで集まってきます。

 

ところが、この日は、集合時間に全員がそろわなかった。

5分間チャレンジに使う道具を探している間に、時間になってしまった。

 

なんてことのない、ちょっとした遅れだし、目くじら立てるほどのことでもない。

 

でも、グロースはこういったことにも、きちんと目を向けます。

 

「集合時間にそろわなかった。何が起きていたんだ?」

たとえ事情を知っていたとしても、子どもたちから直接聞きます。

 

「5チャレの道具がなくて、、、、」

「なくて、どうした?」

「遅れちゃいました。」

 

「集合時間に全員がそろわなかったという、この状態を創り出したのは誰?」

 

この問いかけの答えは、通常は道具を探していた「誰か」になる。

 

グロースでは、この状態を作り出したのは、直接間接関係なく、そこに存在し、同じ目的を持っていた全員。

 

ここにいる全員の欲しい結果は、「スタッフを含めた全員が、集合時間に集まっていること」ですから、その欲しい結果を作り出さなかったのであれば、その目的に参加していた全員が創り出したことになるわけです。

 

大昔の、「連帯責任」とは全く違います。

 原因追及する「原因論」ではなく、それは何を学ぶために起きたことなのか?と言う「目的論」を大事にしています。

 

子どもたちは、「自分」と即座に応えます。

自分が創り出したことなのであれば、繰り返さないために何ができるのかに気付くこともできる。 

遅れたから、とか、約束が守られなかったから、と言う理由で罰を与えることは一切ありません。

大事なことは、どんなことであれ、そこから学ぶこと。

 

誰かのせいにしてしまえば、学ぶことはなくなります。

 

自分のこととして、目の前の問題に取り組むことで、同じ失敗を繰り返さなくなるし、たとえまた繰り返したとしても新たな学びを得ることができるのです。

 

こういったケースで、一番直面するのは、リーダーです。

自分の責任の範囲が、他の子どもたちとは違います。

 

だからこそ、多くを学べるのです。

 

この問題をチームで話し合い、今後二度と繰り返さないために、そして、チームに貢献するために、何ができるのかを、チームの中でお互いに確認しました。

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自分がチームに貢献できることは何か?


 

4日目は、体を休めながらのんびり始める予定でしたが、こんな大事な学びから始まることになりました。

 

朝食の後は、高原の実習です。

第30回グロースセミナー3日目その4

夕食後、ナイトハイクについての話をする。

 

「これから、今日最後のチャレンジ。みんなも疲れているだろうし、低学年は眠い子どももいる。だから、行きたくなければ、このロッジに残って構わない。」

今回は、低学年対策として、全員参加ではなく、希望者だけのチャレンジにすることにした。

夜も遅いことだし、体力も奪われている。

 

「自分の考えで、『行く!』と決めた人だけでやる。

森の生きものたちは夜行性で、クマの巣もあるかもしれない。

その中を1時間以上(約2.5キロ)歩きます。

そして、全員無言で。」

 

この話をしていると、子どもたちの張りつめた緊張感が伝わってくる。

 

「チームごとに一本のロープを渡します。

全員がそのロープにつかまっていればはぐれることはない。

森は真っ暗です。だから、絶対にロープを離さないこと。

懐中電灯は各チーム一本だけ。

スタッフは、みんなの後ろからついていくけど、サポートはしない。

リーダーは道を知っているけれど、夜の森の道は昼とは全く違う。

迷ったら、みんなで協力して歩く。

ゴールは、樹齢800年のミズナラのご神木。

それでは、このチャレンジをやるかどうか、チームで決めます」

 

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幹回り8m、樹高21m、枝張りなんと35m、だった。

ここまで一気にしゃべった。

あとは、子どもたちに任せる。

 

静かに話し合いが始まる。

 

2年生のMSKは昨年は、ロッジに残った。

眠いのもあったのだろうけれど、やはり怖かったのだろう。

今までにも、このチャレンジに腰が引けてしまう子どもは何人もいた。

だから、これだけ低学年が多いから、何人かは残るだろうと、予想していた、、、、

 

ところが、、、、

全員がやる!と決めた。

 

ボクは、低学年に、直接、確認した。

目が輝いている。

疲れてはいるものの、意欲は満々だ。

 

あらためて、ボクたちスタッフの気がひきしまる。

 

21:40 出発点までバスで移動。

バスの中から、すでに無言にさせている。

 

そこから、チームごとに無言で出発。

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出発前

 

昨年は、ひとチーム迷子になった。

今までにも、道を間違えて、とんでもないところまで行ってしまったチームがいくつもある。

 

事前に、クマよけのために、スタッフが大きな音や声を出しながら歩いている。

この役割のスタッフも、実はものすごく緊張する。

だから、思い切り大きな音を出し、大声を出す。

これで、動物たちは警戒する。

 

チームごとに出発する。

30分ほどたって、道のりの半ばで、イントラが声をかける。

「懐中電灯を消して、しばらく森の音を聞いて」

 

森は、様々な音やにおいに包まれている。

ミシミシと何かが近くを歩く

ケモノの匂いが漂う

ざわざわと木々の葉が揺れる音がする。

 

木立の合間から見える空には、満天の星。

 

この星灯りが、森全体を優しく照らしてくれている。

 

スタッフのボクたちは、一切の灯りなしで、10メートルほど後ろからついていくだけ。

子どもたちからは全く見えない。

 

だから、結構道を踏み外すし、怖い思いは何度もする。

 

5分ほど森の中にたたずみ、再度出発させる。

 

子どもたちの真剣なチャレンジから目を離せない。

遠くから、彼らがひとかたまりになって(実際は懐中電灯の光しか見えないのだけれど)歩くのを見守り続ける。

 

やがて、せせらぎの音が聞こえてくる。

 

橋を渡る。

ここでは、よく蛍が見えていたのだけれど、ここ数年は見ることができない。

これも、環境の変化なのだろうか。

 

牧場わきの道に出る。

 

ここまでくればゴールはもうすぐそこだ。

 

「懐中電灯を消して」

イントラの声に従って、光が消える。

最後の15分ほどは、目が慣れてきているので、灯りなしでも歩いていける。

 

そして、ご神木に到着。

 

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現在のご神木、数十メートルの幹を横たえている

 

緊張が解かれ、子どもたちはすぐにおしゃべりを始める。

 

実は、すでにこのご神木は、樹齢800年の命を終え、数年前に雷でその身を横たえている。

それでも、森は死ぬことはない。

このご神木もかつての姿はしていないけれども、その樹幹から新しい命の歴史を始めている。

 

子どもたちに、かつてここに見事にそびえたっていたみずならの話をする。

そして、チームごとに、樹幹の上によじ登り、みずならを体験する。

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幹の上に立つ

今年ラストイヤーのTKHが呟いた。

「初めて来たグロースのナイトハイク。あの時も満天の星だったなぁ。」

感慨深そうに言う彼の心の中に、このミズナラが生きている。

彼の人生の中で、この体験がどんな物語になっていくのだろうか。

 

この日のすべての実習が終わり、ロッジへ戻る。

今日の一日を、みんな、やりきった!

 

23:30就寝

 

明日は8:00起床。

 

すこっしゆっくり起きることにする。