第30回グロースセミナー3日目その2(8月2日)
関東直撃の台風が迫ってきております。
どうやら私が5-6歳の頃以来の強力な台風のようです。
どうぞ、皆さま命の安全確保を!
お互いさまに!!
マウンテンバイク(MTB)を選ぶ。
さらに、ヘルメットとひじ当てひざ当てを装着してから、駐車場で練習を開始する。
子どもたちが、きちんとブレーキを握れているかどうか、
ハンドルをうまくさばけているかどうか、
止まれ!と言われた場所で止まれるかどうか、をチェックする。
初参加組は、道路に出て、下り坂を走らせて、ボクが直接チェックする。
下り坂なので、ペダルはこがない。
スタートさせた後に、
「はいブレーキ!」
「ブレーキ放す!」
これを繰り返しボクが叫んで、その通りに走ってもらう。
懸念していた1年生は順調に、みな言われた通りブレーキを握り、放し、そして制動できている。
ところが、2年生のKSR。
去年は、身長が足りないうえに、手が小さくてブレーキを握れなかった。
ものすごく楽しみにしていたのに、自転車は得意なのに、ヌプカに用意してあるMTBは彼女には大きすぎたようだった。
悔しい思いをしたKSRは、満を持して今年に臨んだ。
ところが、、、、
今年も、ブレーキをしっかり握れない。
「止まれー!」の合図で制動できない。
KSRは必死にブレーキを握っているのだけれど、止まれないから結局足ブレーキをすることになる。
「足はペダルの上!」と叱られる。
何回も何回もチャレンジしたものの、しばしばの「合格」はもらえなかった。
「KSR、ブレーキが握れなければ乗せられない。残念だろうけど、応援だ。」
目にいっぱい涙をためている。
チャレンジさせてあげたい気持ちはやまやまだけれども、安全のためにもやらせるわけにはいかない。
数年前に、こんなことがあった。
やる!と決めてチャレンジしたものの、坂道を目の前にしてペダルに足を乗せられない。
ブレーキを握ったまま手を離せない。
チーム全員でサポートし、ボクやイントラが必死にサポートした。
感心したのは、その時のチームが、文句ひとつ言わずに、ずっと励ましながらそばにいてくれたこと。
あの時は、約5キロの下り坂に2時間以上かかった。
そんなこともあったので、安全のためには、MTBではないチャレンジをすることになる。
KSRは、乗りたくて仕方がないのに、さぞかし悔しかっただろう。
「KSR、悔しいな。でも、今年も応援だ。みんなを力いっぱい応援してもらえるか?」
KSRは、泣きながら大きくうなづいた。
10:30 いよいよ、チームごとに出発。
ボクは、1年生のHKのサポート。
1年生には、誰かしらサポートがマンツーマンで就く。
1年生のHKは、何とかブレーキを握れるものの、長い坂道をどこまで頑張り切れるかわからない。
少しの気のゆるみで、大きなけがにもつながるMTBだから、こちらも必死だ。
「ブレーキ!」
「ブレーキはなして!」
「足出すなー!」
「しばしばを追い越すなー!」
全身に力を込めてブレーキングをし、またブレーキを話す、この繰り返し。
怒鳴られながら、HKは、なんとか約5キロを降り切った。
(後日感想文に、この時のしばしばがものすごく怖かった、と書いてあった(^^)
他の1年生たちも、無事に坂を降り切った。
ここまでくると、少しだけホッとする。
それでも、まだ気は抜けない。
まだ、上り坂や、長い下り坂、そして、砂利道が、待っている。
1年生の女子SRAも、TMMは、気持ちよさそうに、思った以上に順調に降りて行った。
休憩ポイントで、全チームが集まる。
そこで、出発前に泣いていたJRAを見つけた。
満面の笑顔だ。
「JRA、ここまではどうだった?」
「楽しーっ!」
「そうか、何が一番楽しかった?」
「くだりざか!」
なんと、あれだけ怖がっていた下り坂が一番楽しかったと!!
怖かったものを乗り越える。
ボクたちの日常に、どれだけそんな機会があるだろうか。
経験から、うまいこと回避したり、無理だなと思えば、先送りするか、あきらめる。
でも、JRAは、必死に向き合った。
終わってみれば、なんてことなかった、で済んでしまいそうなことだけれども、これがどれほど大きなことだったことか。
JRAは、そんな達成感や喜びをしっかりと味わえたようだ。
ボクはJRAに、何よりもあきらめずにチャレンジしたことを、心から承認した。
休憩ポイントの後は、長い道のりを走り、最後に試練の砂利道だ。
ハンドルがとられ、ペダルをうまくこげない。
しまいには転倒する。
低学年にとっては、最後の最後に待っている辛い時間だ。
SOUは転倒し、HRTは続ける気力がなくなる。
RKは、走行が危うく、ついにオヤジにストップをかけられた。
疲労もあるし、転倒もして、気持ちが弱気になっている。
RKは、続行は危険と判断して、軽トラに乗せた。
SOU、HRTは結局やり切った。
砂利道が終わり、最後のゴールに向かう道で。
貢さんは、軽トラに乗せていたRKと、KSRを、MTBに乗せた。
チームと一緒にゴールさせりために。
それだけでも、二人にとってはうれしい体験だったようだ。
満面の笑顔で、ゴールしてきた。
走り切った満足感で、お互いを承認しあい、このゴールの中央公園で弁当を食べた。
しばしの休息。
3日目は、まだまだ続く。
第30回グロースセミナー3日目その1(8月2日)
3日目朝、快晴
今日も暑くなりそうだ。
6:30起床後、体操と5分間チャレンジ。
朝食をとり、この日のプログラムを伝える。
リピーターの子どもたちの多くが、一番の楽しみにしているマウンテンバイク(MTB)だ。
ワーッ!と歓声が沸く。
高原から、約30キロの道のり。
牧場を見ながら公道を走り下りる。
下り坂があれば、きつい登坂もある。
見渡す限りまっすぐに続く、十勝ならではの道もある。
ロッジからの最初の5キロは急な下り坂。
この坂が、低学年にとっては、恐怖の5キロ。
とても牧場を見る余裕などはない。
ブレーキを握りっぱなしだと。ブレーキを握る力がなくなってしまう。
スピードが出て、ハンドルがぶれ、MTBを止められなくなる。
最後は、足を出して、足ブレーキで止まろうとしてしまう。
今までに大きなけがはなかったものの、急ブレーキでMTB前転ごと前転したり、スピードを出しすぎて、転倒したり、と何度もヒヤッとさせられたことがある。
子どもたちはマウンテンバイクのチャレンジをやるのかどうか、チームごとに決める。
全チーム、やる気満々であっという間に決まった。
が、決まった後になって、JRAの表情が曇っていく。
全員が、ロッジに準備に出て行った後に、JRAを呼び寄せて話をする。
「JRA、どうした?」
泣いているJRAは何も答えられなくなっている。
「怖いのか?」
うなづくJRA。
「で?どうしたいんだ?」
「やりたい、でも、、、、、」
「そうだよな、2年連続で怖くてできなかったんだ。今年こそって思えば思うほど、また怖くなっちゃうかもなぁ。
でも、やるか、やらないかは、JRAしか決められない。だから、JRA,お前が自分で決めるんだ。」
JRAは、1年目、MTBがものすごく楽しみと言いながら、恐怖でペダルを踏み出せなかった。
2年目の昨年も、「今年こそやる!」と言いながら、結局は踏み出せなかった。
だから、今年への意気込みは相当なものだっただろうと思う。
誰にとっても、恐怖を乗り越えようとするにはとてつもない勇気がいる。
体操の選手は失敗したらすぐにやり直しをするという話を聞いたことがある。
時間を空けてしまうと、恐怖でその技ができなくなってしまうらしい。
JRAは2年間もその恐怖と一緒にいる。
震えるのも仕方ない。
こんな時に、大人のボクたちにできることは何だろうか。
励ましたり、力づけたし、叱咤したり。
でも、それは、必ずしも自立にはつながらない。
自分がその立場で、いろいろ言われたら、
「うるさい、黙ってろ、」と、叫ぶかもしれないし、
「やっぱりできないよ、今度にするよ」などと、泣き言をいうかもしれない。
しばらくして、涙を拭いて、はっきりと「やる」と言って、準備をしにロッジに戻った。
結局、JRAは自分で決めた。
ボクたちにできることは、ボクたちの望むことをやらせることではなくて、子どもたちが自分で決めることのできる、環境を提供してあげることだけ。
そして、何を決めようとも、そのことをいったん受け止めてあげることなのです。
続く
第30回グロースセミナー2日目その4(8月1日)
山下のオヤジは、日本の熱気球の草分け的な存在。
全国に山下のオヤジのお弟子さんがたくさんいる。
グロースの1回目から、30年間一度も休まずに、グロースの子どもたちに気球を上げてくれている。
「風がおさまるのが6時くらいだぁ、もうちょっとまってろぉ。」
オヤジは風を読む。
普通のパイロットなら飛ばせないような強い風の中でも、何とか上げてくれる。
強い風が吹いていても、空を見上げながら、
「あと30分まってろぉ」
と言うと、その通り風は止む。
この日も、まるで山下のオヤジの指示を受けたように、風はおさまった。
全員の目が輝いている。
いや、ひとりだけ絶対に乗らないと言い張っていたHRTも、途中から乗ってみたい、と言い出した。
気球の籠に乗ると、ガスバーナーの音に驚き、その強烈な炎に驚かされる。
そして、思った以上に早く上昇するスピードにも。
空の上から、夕やみ迫る十勝平野を見渡す。
この光景が、子どもたち一人一人の心の中に焼き付けられていく。
気球から降りてきた子どもたちの表情も目の輝きも、乗る前とまったく変わっている。
オヤジは、この満面の笑顔が見たくて飛ばしてくれるんだろうと、勝手に思うほど。
オヤジやサポートしてくれた気球のスタッフの皆さんにお礼を言って、ヌプカにもどる。
サポーターの用意してくれた夕食を食べてから、21:50にご馳走様。
子どもたちに明日の起床時間を伝える。
明日の朝は6:30起床。
後は子どもたちが、寝る時間を22:30と決めて、2日目が終了。
明日の3日目は、とても忙しい。
第30回グロースセミナー2日目その3(8月1日木曜日)
山登りの後は、遅い昼食の後、上士幌まで移動して温泉に浸かる。
山歩きをすると、ヤマダニに食われることがある。
ボクも何度もやられたことがあるけれど、頭を肌に食い込ませたヤマダニを取り除くのは厄介な作業だ。
全身をチェックするためには、温泉の大浴場に入るのが一番。
そして、温泉に行く準備をするための時間を決める時のこと。
20分で準備をするという意見が大半を占める中で、ひとり25分と言い続けるHRT。
すると、20分を主張するメンバーの中から
「なぜ25分がいいのか?」と質問が出る。
HRTは、特に答えることもなく25分を言い続ける。
「答えてくれなきゃわからないから、教えて」と質問が続く。
こういうケース、皆さんならどうしますか?
学校や、何かの集まりでは、大多数の意見が尊重され少数意見は説得されるかねじ伏せられます。
20分を主張する多数VS、25分を理由も言わずにいるひとり。
どう見ても、25分が劣勢です。
でも、じゃんけんや、多数決をやらないグロースでは常に、それぞれの意見が尊重されます。
しばらく様子を見ていましたが、中断。
「ちょっと待て。今の様子は、25分と言っているHRTをみんなで説得しようとしているように見えるけど、違うか?
よく見ていると、“20分”と、はっきり言っているのは4〜5人で、それ以外は、うなづくか黙ったまま。
HRTが25分と言っているときにも何も言わないし、自分から理由を聞こうともしていない。
そもそも、なぜ、25分である理由を聞きたいなら、自分たちが言う20分の理由はどうなんだ?
なんだかフェアじゃないような感じがするぞ。
そもそも、黙っままでいるやつもフェアじゃない。
ここは、自分の意見を言う場所で、それを練習する場所だ!
はい、時間を決めろ!」
こういうかかわりをするから、何かと決まるまで時間はかかってしまう。
プログラムをスムースに進めることが目的なら、大人の判断で前に進ませる。
でも、ここはグロースセミナー。
子どもたちが、自分で決める場所、
そしてそれを総意で決定することを練習することが一番の目的だ。
まどろっこしいけれども、この繰り返しをしながらすこしずつ自立の道を歩んでいく。
だから、子どもたちが、考えて、試行錯誤して、そのうえで決定することを大切にする。
そして、彼らが決定したことは、よほどのことがない限り尊重していく。
結局、何分で準備するのか、メモには残っていないので忘れてしまったけれど、全員で決めてから、上士幌(朝ドラの「なつぞら」のロケ地)の「しほろ温泉プラザ緑風」までバス移動。
出発前にRKの体温を測ると、39度1分
温泉に行くか、休むか、RKに、念のため決めさせる。
様子を見る限り、もし「行く」と言ったら、ボクからはNOを言おうとは思っていたけれど、RKは何とか頑張ろうとしていたけれども、自分で「休みます!」と宣言して、ロッジの残ることに。
ヌプカに残るサポーターにRKを託し、ボクたちは出発した。
温泉でゆっくりと山登りの汗を流し、からだのチェック。
今回は、無事、ヤマダニ被害はいなかった。
今夜は、もう一つプログラムが残っている。
温泉から、上士幌の滑走路まで移動する。
子どもたちが興奮する、熱気球だ!
続く
第30回グロースセミナー2日目その2
テントの撤収と、周辺のごみチェックを終えて、2日目が始まる。
ロッジに戻り、体操と5分間チャレンジ。
この日は白雲山登山。
標高1186メートル。
大雪山国立公園の南端にあり、叱り熱子をもロス360度の絶景を望める。
「この山はクマが出るかもしれない、
クマザサが生い茂っていて道を見失うこともあった。
低学年の身長よりも大きな岩がごろごろしている場所がある。
木の根が地面に盛り上がっていて、ある傷来道もある。
おまけに最後の山頂へのアタックは、巨大な岩をよじ上ることになる。
地元の小学生たちは3年生になったら、この山に登れる。
でも、運が良ければ、希少動物のエゾナキウサギやエゾリスを見ることができるかもしれない。
山頂からは然別湖と言うものすごくきれいな湖を見下ろせるかもしれない」
などなど、危険があることも、登山の達成感の在ることも同じように伝える。
そして、各グループで、話しあいをし、この実習をやるのか、やらないのかを、決めていく。
時間のかかる話し合いになることもあるのだけれど、この日はあっという間に
全員、「のぼる!」と決めた。
あのRKも、
そしてあのHRTも、である。
やると決まったら、早速の準備開始。
登山靴に履き替え、持ち物を用意し、おむすびを自分でつくる。
山頂で、食べるためのおむすびだ。
それを自分で作ってから山に登る。
手に一杯ご飯粒をつけているRYO、ちいさなおにぎりを3つ並べているKSR、毎回でっかいのをつくるTKH、まるでアートをしているようにおにぎりが出来上がっていく。
8:20 チームごとに登山開始。
暑さの中、低学年の子どもたちがどこまでやれるのか、一抹の不安を感じながら送り出す。
何回か休憩する場所がある。
バナナポイントと名付けている休憩場所では、まさしく、出発時に渡したバナナを食べる。
その後の第1休憩ポイントでは、ネイチャーゲーム「音いくつ」
子どもたちは、目を閉じたまま、聞こえてくる音を指折り数えていく。
鳥のさえずり、その夜風に揺れる木々の葉、とおくにきこえるほかのチームの声、虫の羽音、、、
目を閉じて、集中して耳を傾けている様子に、心動かされてしまう。
第2休憩ポイントでは、「色いくつ」
同じ緑色でも、何種類もある。色の名前がわからないから、オリジナルで自分で考える。
この「色いくつ」は、多い子どもで10個くらいを見つけて終了する。
ところが、「おれ30!」と興奮気味にいう子どもがいる。
なんとあのHRTだ。
生き生きと目を輝かせながら、「オレこの実習気に入った、もっと探す。100まで探す」
しばらくすると、「もう35になった」
HRTは、山頂でも色を探し続けた。
「オレ、ノートに全部書く。家に帰ってもやる」
相当気に入ったらしい。
下山後に、HRTにノートを見せてもらった。
みどり、あか、きいろ、くろ、しろ、、、、、、、
うすみどり、うすあか、うす、、、、、、
うすうすみどり、うすうすあか、、、、、、
心底、感動した。
ありったけの想像力で、工夫した名前が次々に現れる。
HRTのイマジネーションが一気に広がった。
「好き」を見つけることは、心が動いた自分を実感することであり、自分という存在を確認することでもある。
HRTが、HRTなりに、自立の一歩を踏み出した瞬間だ。
晴れ渡った空のもと、山頂は360度見渡せる絶景だ。
全員、山頂に立ち、見事に広がる然別湖を眼下に見て、自分で作った握り飯をほおばる。
そして無事に下山。
最後のチームが下りてくるのを待っていた時に、ちょっとした出来事。
1年生のHKが、一人ぽつんとチームから離れて座っている。
「どうした?」
近づいたボクにHKは「AOTが怖い」と言う。
AOTは、気のいい奴で、誰かを怖がらせるようなことをいうやつではない。
それでも、HKが怖がっているわけだから、放っておくことはできない。
AOTは小学校6年生で、とんちんかんな発言をして、よくみんなを笑わせている。
こういうことは、丁寧に向き合うことが大事。
どちらかを悪者にするような判断はしない。
ただ、事実を確認していく。
さっそく、ボクは、AOTを呼んで、伝えてみた。
「AOT、HRKがお前のこと、怖いって言ってる。HRKにどんなことを言ったのか覚えてるか?」
首をかしげるAOT。
どうやら覚えはないらしい。
「HRK、AOTに自分で言えるか?何が怖かったのかって」
HRKは、うつむきながらも、AOTに
「さっき、トイレに行こうとした時に、今はダメだっていわれた。それが怖かった」
「AOT、聞いたか?HRKに、なんか言うことはあるか?」
「あっ、そのときはみんなで一緒にいたほうがいいと思って、いかない方がいいと思っただけで、、、、」
「HRKは、それが怖かったんだって」
「あっ、はい、気をつけます」
「HRK、AOTは、怖がらせたわけじゃなかったみたいだ。同じチームとして、これからも一緒にやっていけるか?」
HRKは「わかった」と言ってうなづく。
「じゃあ、二人で握手してこのことはおしまい、それでいいか?」
完了する。
このこともグロースではいつも大事にしている。
感情のわだかまりが残ったままにしておくのではなく、そのことを、しっかりと自分の中で完了する。
なかったことにするという意味ではないし、それを終わらせるというニュアンスでもない。
ボクたちは、過去に起きたことを思い出しては嫌な思いを再現する癖がある。
恨みつらみが消えず、時には自分を批判する。
完了は、
そのことから学ぶ。
そのことを受け取る。
その事実を認める。
簡単なことではないけれど、小さな言い争いや、嫌なことがあった時も、完了することで、新しい一歩を踏み出すことができるのです。
この後の二人の様子に、特段おかしなところもなかった。
こうやって、何度も、何度も、子どもたちの潔い気持ちを切り替えを見せられる。
15:45 全チーム下山。
白雲山の登山を、全員でやり遂げたことを承認。
疲れは見えるものの、皆の顔に満足した笑顔があふれている。
続く
第30回グロースセミナー2日目その1(8月1日木曜日)
4時、まだが陽が昇る前に起き出して、高原の様子を確認する。
今日も晴れそうだ。
RKの様子を見る。
一緒に寝ていた道代に聞いてみると、ぐっすり寝ていたという。
5時少し前に声をかけてみる。
寝ぼけ眼で起きたRKの熱を測る。
37℃。
大丈夫そうだ。
後はRK自身の気持ち。
「RK、おはよう。気分はどうだ?」
「だいじょうぶ」
「そうか、きのうは、家に帰りたいって言ってたけど、どうしようか?」
そう聞くと、間髪入れずに「帰りたい、休みたい」と涙を流しながら言う。
「そうか、帰りたいか。わかった。じゃぁ、帰ることにしよう。ところで、予定よりも早く帰ってママに何て言うんだ?」
「・・・・・・・・・・」
「途中で帰ってきたらママに、理由を伝えないといけないからなぁ。
熱が出ちゃったし、さみしくなったから帰ってきたっていう?」
こう聞くと、気弱になっている子どもでも、考えながら首を横に振ることが多い。
でもRKは、待ってましたとばかりにうなづく。
「そうか、じゃあ、こういうのはどうだ?
『さみしかったし、すごく熱も出たけど、ボクは全部参加して頑張ったんだよ」って言いうのはどう?」
するとRKは、しばらく考えた末に、今度は首を縦に振った。
「それじゃあ、どうしようか?もう少しみんなと頑張ってみるか?」
涙を拭きながら、大きくうなづいたRKは、途端に強くたくましいRKに生まれ変わったようだった。
1年生ながら、初めて親元を離れてきた。
心細かっただろうけれども、RKは、ほんのわずかなうちに「自分で決めた」。
ピーターパン・パンの作者、ジェームス・バリーは、
「子どもはほんの30秒で成長する」と書き記している。
グロースセミナーでは、こういった瞬間を、何度も目にする。
「よし、じゃあ、みんなのところに行って、テントの撤収を手伝おう」
そこからのRKは、もう二度と泣きべそをかかなかったし、帰りたいとも言わなくなった。
RKの気持ちのシフトに驚かされる。
高原のてっぺんまで上がると、もう子どもたちは起き出していて、そこここでテントの撤収が始まっていた。
RKは、一目散で仲間たちのもとへ走っていった。
そんな中で、だいぶ離れた場所でみんなに背を向けて、ひとりしゃがみこんでいるHRTがいた。
しばらく放っておいた。
10分ほどたったころに、イントラのケイイチを呼んで、指をさし、「行っといで」、とだけ伝える。
どうかかわるのかは、いったんケイイチにまかせてみることにした。
遠くから二人の様子を見ていると、HRTは首を横に振ってうつむいたまま。
長くグロースに参加し続けて、今年初めてイントラになったケイイチに、ボクは絶大な信頼がある。
彼のリーダーシップも、仲間への愛情も、まだ高校1年生とはいえ、その質の高さをボクは買っている。
でも、HRTはなかなか動いてくれないようだ。
しばらくして、ボクは二人のもとに様子を見に行く。
「どうした?」
HRTは、しゃがんだままうつ向いている。
ボクは、昨晩RKが発熱して「帰りたい」と言いながら泣いていた時に、近くまで来て様子を見ていたHRTを知っていた。
その時のHRTの目には、涙があふれそうだった。
HRTは2年生の初参加。
彼も親から初めて離れてのキャンプだ。
彼なりに、我慢していたのに違いない。
「HRT、いったん立とうか。」
両足できちんと立った状態で話をする。
「昨日RKが泣いていた時に、本当はおまえも泣きたかったんじゃないのか?あのとき、頑張ったのか?」
「うん」
「よし、そのことはお母さんに報告しなきゃな。泣きたくなったけど、頑張ったって。
じゃあ、今日これからのことはどうしようか?」
うつむくHRT
「HRTはどうしたいんだ?」
そう聞くとHRTはすかさず、
「迎えに来てもらって帰りたい」という。
「そうかぁ、帰りたいんだな。ただ、これから、お母さんに連絡して飛行機を予約して来てもらえたとしても、今日来れるかどうかはわからない。おうちまで送ってあげたいけれどしばしばやスタッフはここを離れるわけにはいかない。どうしようか?」
HRTは、黙り込んだまま泣いている。
「仮に、迎えに来てもらえたとして、HRTはお母さんになんて言うんだ?」
今朝のRKへの関わりと同じ。
だまっているHRT に、
「『ボクは、さみしくなって帰りたくなったから、おかあさんに迎えに来てもらった』って?」
力強くうなづく。
「そうか、いずれにしろ、HRTのことだから、自分で決めよう。
いいか、帰るも帰らないも、やるもやらないも、ぜーんぶHRTが決めるんだ。
このグロースはそういう練習をする場所。
しばしばは決めるんじゃなくて、お前が決めるんだぞ。
みんなと協力して、全部の実習をやり遂げるのか、やらずに帰るのか、自分で決めてくれ。」
するとHRTは、すかさず「1番」と答える。
一瞬何のことなのかわからなかったのだけれど、最初に言った「協力してやること」を指しているようだ。
「えーっと、、、、確認させてくれ。HRTは、お母さんに『ボクは帰りたくなったけど、最後までやり通した』って言いたいのか、『帰りたくなったから迎えに来てもらった」って言いたいのか、どっち?』
HRTの答えは、また、「一番!」だった。
HRTの気持ちや考えに、どんなシフトが起こったのかは全く分からないけれど、HRTはボクの目を見て、はっきりと言った。
「よし、じゃあみんなでテントを片づけている。HRTも手伝いをしてくれ」
すると、突然、涙を拭きながら、仲間のところに向かって猛ダッシュで駆け出していた。
まただ。
この瞬間に気持ちを切り替える潔さ。
本当に、子どもたちから多くを学ぶ。
続く
第30回グロースセミナー1日目その3
炭火を起こす。
飯盒を炭火で炊く。
ぐつぐついいはじめたら、石ころをふたの上にのせる。
頃合いを見計らって、炭火からおろして、飯盒をひっくり返す。
こういった一連の作業は、なんだかとても心が休まる。
おいしく炊きあがったメシを、30人以上で一緒に食べるのは格別だ。
夕食も終わり、HABITATを始める。
HABITATは、動植物の生活環境や、その生息場所のこと。
このネイチャーゲームは、そういった自然環境を言葉ではなく、身体表現でする実習だ。
誰かに無言でメッセージを伝える、ジェスチャーとも違う。
その自然環境そのものになって、自分の内側からのエネルギーを感じることができる。
もちろん、そんな難しいことではなく、毎回子どもたちは自由にその表現を楽しんでいる。
各チームで、森の中で見たふき畑の周辺の様子を、表現する。
どのチームもユニークで、観察力にたけ、そして表現力が豊かだ。
熱を出して横になっているRKも、ベンチごと運ばれてHABITATの実習に参加していた。
すっかり日も落ち、満天の星がきらめいている。
グロースの一日が終わろうとしている。
HABITATの実習の頃まではまだ元気だったRKの熱は上がる一方で、「家に帰りたい」と泣きだしている。
低学年の発熱は、昨年で十分に経験しているけれども、気は抜けない。
今夜は、テントではなくロッジに宿泊させて、一晩、様子を見ることにした。
2日目の朝は5時起床。
そのことをボクから伝えて、全員で寝る時間を決める
子どもたちは、だいぶ疲れている。
リーダーを中心に、寝る時間は21:00と決定。
それぞれのテントに移動する。
リーダー4人はその場所に残ってもらい、今日の振り返りをする。
リーダーになってうまくいったこと、いかなかったこと、
チームのことで、困っていること、うれしかったこと
明日に向けて強化するポイントなどなど
じっくりと確認して、リーダーたちの一日は終了です。
その後は、ボクたちスタッフもミーティングをします。
イントラチームとサポーターチームの連携を確認し、お互いをねぎらう。
さらに、サポーターチームは後片付けもあり、イントラチームもミーティングを重ねる。
ボクは明日の準備のためにロッジへ戻り、RKの様子を確認。
ぐっすり眠っている。
長い一日が終わった。
続く