「自分軸で生きる」 

誰だって自分を知る旅の途中 だからこそ自分を知ることの楽しさを伝えるブログ

第30回グロースセミナー2日目その2

テントの撤収と、周辺のごみチェックを終えて、2日目が始まる。

 

ロッジに戻り、体操と5分間チャレンジ。

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毎朝の体操と5分間チャレンジ


 

この日は白雲山登山。

標高1186メートル。

大雪山国立公園の南端にあり、叱り熱子をもロス360度の絶景を望める。

 

「この山はクマが出るかもしれない、

クマザサが生い茂っていて道を見失うこともあった。

低学年の身長よりも大きな岩がごろごろしている場所がある。

木の根が地面に盛り上がっていて、ある傷来道もある。

おまけに最後の山頂へのアタックは、巨大な岩をよじ上ることになる。

地元の小学生たちは3年生になったら、この山に登れる。

でも、運が良ければ、希少動物のエゾナキウサギエゾリスを見ることができるかもしれない。

山頂からは然別湖と言うものすごくきれいな湖を見下ろせるかもしれない」

などなど、危険があることも、登山の達成感の在ることも同じように伝える。

 

そして、各グループで、話しあいをし、この実習をやるのか、やらないのかを、決めていく。

時間のかかる話し合いになることもあるのだけれど、この日はあっという間に

全員、「のぼる!」と決めた。

 

あのRKも、

そしてあのHRTも、である。

 

やると決まったら、早速の準備開始。

登山靴に履き替え、持ち物を用意し、おむすびを自分でつくる。

山頂で、食べるためのおむすびだ。

それを自分で作ってから山に登る。

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おにぎりを作る作業は、まるでアート。


 手に一杯ご飯粒をつけているRYO、ちいさなおにぎりを3つ並べているKSR、毎回でっかいのをつくるTKH、まるでアートをしているようにおにぎりが出来上がっていく。

 

8:20 チームごとに登山開始。

 

暑さの中、低学年の子どもたちがどこまでやれるのか、一抹の不安を感じながら送り出す。

 

何回か休憩する場所がある。

 

バナナポイントと名付けている休憩場所では、まさしく、出発時に渡したバナナを食べる。

 

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バナナポイントで。

その後の第1休憩ポイントでは、ネイチャーゲーム「音いくつ」

子どもたちは、目を閉じたまま、聞こえてくる音を指折り数えていく。

鳥のさえずり、その夜風に揺れる木々の葉、とおくにきこえるほかのチームの声、虫の羽音、、、

目を閉じて、集中して耳を傾けている様子に、心動かされてしまう。

 

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ネイチャーゲーム「音いくつ」

第2休憩ポイントでは、「色いくつ」

同じ緑色でも、何種類もある。色の名前がわからないから、オリジナルで自分で考える。

 

この「色いくつ」は、多い子どもで10個くらいを見つけて終了する。

ところが、「おれ30!」と興奮気味にいう子どもがいる。

なんとあのHRTだ。

 

生き生きと目を輝かせながら、「オレこの実習気に入った、もっと探す。100まで探す」

 

しばらくすると、「もう35になった」

 

HRTは、山頂でも色を探し続けた。

「オレ、ノートに全部書く。家に帰ってもやる」

 

相当気に入ったらしい。

下山後に、HRTにノートを見せてもらった。

みどり、あか、きいろ、くろ、しろ、、、、、、、

うすみどり、うすあか、うす、、、、、、

うすうすみどり、うすうすあか、、、、、、

 

心底、感動した。

ありったけの想像力で、工夫した名前が次々に現れる。

HRTのイマジネーションが一気に広がった。

「好き」を見つけることは、心が動いた自分を実感することであり、自分という存在を確認することでもある。

HRTが、HRTなりに、自立の一歩を踏み出した瞬間だ。

 

晴れ渡った空のもと、山頂は360度見渡せる絶景だ。

全員、山頂に立ち、見事に広がる然別湖を眼下に見て、自分で作った握り飯をほおばる。

 

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山頂への最後の岩

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然別湖

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山頂からの絶景

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全員登頂に成功

そして無事に下山。

 

最後のチームが下りてくるのを待っていた時に、ちょっとした出来事。

1年生のHKが、一人ぽつんとチームから離れて座っている。

 

「どうした?」

近づいたボクにHKは「AOTが怖い」と言う。

AOTは、気のいい奴で、誰かを怖がらせるようなことをいうやつではない。

それでも、HKが怖がっているわけだから、放っておくことはできない。

AOTは小学校6年生で、とんちんかんな発言をして、よくみんなを笑わせている。

 

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こういうことは、丁寧に向き合うことが大事。

 

どちらかを悪者にするような判断はしない。

ただ、事実を確認していく。

 

さっそく、ボクは、AOTを呼んで、伝えてみた。

「AOT、HRKがお前のこと、怖いって言ってる。HRKにどんなことを言ったのか覚えてるか?」

首をかしげるAOT。

 

どうやら覚えはないらしい。

 

「HRK、AOTに自分で言えるか?何が怖かったのかって」

 

HRKは、うつむきながらも、AOTに

「さっき、トイレに行こうとした時に、今はダメだっていわれた。それが怖かった」

 

「AOT、聞いたか?HRKに、なんか言うことはあるか?」

 

「あっ、そのときはみんなで一緒にいたほうがいいと思って、いかない方がいいと思っただけで、、、、」

 

「HRKは、それが怖かったんだって」

 

「あっ、はい、気をつけます」

 

「HRK、AOTは、怖がらせたわけじゃなかったみたいだ。同じチームとして、これからも一緒にやっていけるか?」

 

HRKは「わかった」と言ってうなづく。

 

「じゃあ、二人で握手してこのことはおしまい、それでいいか?」

 

完了する。

このこともグロースではいつも大事にしている。

感情のわだかまりが残ったままにしておくのではなく、そのことを、しっかりと自分の中で完了する。

なかったことにするという意味ではないし、それを終わらせるというニュアンスでもない。

ボクたちは、過去に起きたことを思い出しては嫌な思いを再現する癖がある。

恨みつらみが消えず、時には自分を批判する。

完了は、

そのことから学ぶ。

そのことを受け取る。

その事実を認める。

簡単なことではないけれど、小さな言い争いや、嫌なことがあった時も、完了することで、新しい一歩を踏み出すことができるのです。

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この後の二人の様子に、特段おかしなところもなかった。

 

こうやって、何度も、何度も、子どもたちの潔い気持ちを切り替えを見せられる。

 

15:45 全チーム下山。

白雲山の登山を、全員でやり遂げたことを承認。

 

疲れは見えるものの、皆の顔に満足した笑顔があふれている。

 

続く

 

 

 

第30回グロースセミナー2日目その1(8月1日木曜日)

4時、まだが陽が昇る前に起き出して、高原の様子を確認する。

 

今日も晴れそうだ。

 

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夜中に雨が降ったせいか、虹が出ていた

RKの様子を見る。

 

一緒に寝ていた道代に聞いてみると、ぐっすり寝ていたという。

 

5時少し前に声をかけてみる。

 

寝ぼけ眼で起きたRKの熱を測る。

 

37℃。

 

大丈夫そうだ。

 

後はRK自身の気持ち。

 

「RK、おはよう。気分はどうだ?」

 

「だいじょうぶ」

 

「そうか、きのうは、家に帰りたいって言ってたけど、どうしようか?」

そう聞くと、間髪入れずに「帰りたい、休みたい」と涙を流しながら言う。

 

「そうか、帰りたいか。わかった。じゃぁ、帰ることにしよう。ところで、予定よりも早く帰ってママに何て言うんだ?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「途中で帰ってきたらママに、理由を伝えないといけないからなぁ。

熱が出ちゃったし、さみしくなったから帰ってきたっていう?」

こう聞くと、気弱になっている子どもでも、考えながら首を横に振ることが多い。

 

でもRKは、待ってましたとばかりにうなづく。

 

 

「そうか、じゃあ、こういうのはどうだ?

『さみしかったし、すごく熱も出たけど、ボクは全部参加して頑張ったんだよ」って言いうのはどう?」

するとRKは、しばらく考えた末に、今度は首を縦に振った。

 

「それじゃあ、どうしようか?もう少しみんなと頑張ってみるか?」

 

涙を拭きながら、大きくうなづいたRKは、途端に強くたくましいRKに生まれ変わったようだった。

 

1年生ながら、初めて親元を離れてきた。

心細かっただろうけれども、RKは、ほんのわずかなうちに「自分で決めた」。

 

ピーターパン・パンの作者、ジェームス・バリーは、

「子どもはほんの30秒で成長する」と書き記している。

 

グロースセミナーでは、こういった瞬間を、何度も目にする。

「よし、じゃあ、みんなのところに行って、テントの撤収を手伝おう」

 

そこからのRKは、もう二度と泣きべそをかかなかったし、帰りたいとも言わなくなった。

RKの気持ちのシフトに驚かされる。

 

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この瞬間をいつもカメラで狙うのが好きだ

高原のてっぺんまで上がると、もう子どもたちは起き出していて、そこここでテントの撤収が始まっていた。

 

RKは、一目散で仲間たちのもとへ走っていった。

 

 

そんな中で、だいぶ離れた場所でみんなに背を向けて、ひとりしゃがみこんでいるHRTがいた。

 

しばらく放っておいた。

 

10分ほどたったころに、イントラのケイイチを呼んで、指をさし、「行っといで」、とだけ伝える。

 

どうかかわるのかは、いったんケイイチにまかせてみることにした。

 

遠くから二人の様子を見ていると、HRTは首を横に振ってうつむいたまま。

 

長くグロースに参加し続けて、今年初めてイントラになったケイイチに、ボクは絶大な信頼がある。

彼のリーダーシップも、仲間への愛情も、まだ高校1年生とはいえ、その質の高さをボクは買っている。

 

でも、HRTはなかなか動いてくれないようだ。

 

しばらくして、ボクは二人のもとに様子を見に行く。

 

「どうした?」

HRTは、しゃがんだままうつ向いている。

 

 

ボクは、昨晩RKが発熱して「帰りたい」と言いながら泣いていた時に、近くまで来て様子を見ていたHRTを知っていた。

その時のHRTの目には、涙があふれそうだった。

HRTは2年生の初参加。

彼も親から初めて離れてのキャンプだ。

彼なりに、我慢していたのに違いない。

 

「HRT、いったん立とうか。」

両足できちんと立った状態で話をする。

 

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たまたま3人で色がそろっていた

「昨日RKが泣いていた時に、本当はおまえも泣きたかったんじゃないのか?あのとき、頑張ったのか?」

 

「うん」

 

「よし、そのことはお母さんに報告しなきゃな。泣きたくなったけど、頑張ったって。

じゃあ、今日これからのことはどうしようか?」

 

うつむくHRT

 

「HRTはどうしたいんだ?」

そう聞くとHRTはすかさず、

 

「迎えに来てもらって帰りたい」という。

 

「そうかぁ、帰りたいんだな。ただ、これから、お母さんに連絡して飛行機を予約して来てもらえたとしても、今日来れるかどうかはわからない。おうちまで送ってあげたいけれどしばしばやスタッフはここを離れるわけにはいかない。どうしようか?」

HRTは、黙り込んだまま泣いている。

 

「仮に、迎えに来てもらえたとして、HRTはお母さんになんて言うんだ?」

今朝のRKへの関わりと同じ。

だまっているHRT に、

 

「『ボクは、さみしくなって帰りたくなったから、おかあさんに迎えに来てもらった』って?」

力強くうなづく。

 

「そうか、いずれにしろ、HRTのことだから、自分で決めよう。

いいか、帰るも帰らないも、やるもやらないも、ぜーんぶHRTが決めるんだ。

このグロースはそういう練習をする場所。

しばしばは決めるんじゃなくて、お前が決めるんだぞ。

みんなと協力して、全部の実習をやり遂げるのか、やらずに帰るのか、自分で決めてくれ。」

 

するとHRTは、すかさず「1番」と答える。

 

一瞬何のことなのかわからなかったのだけれど、最初に言った「協力してやること」を指しているようだ。

 

「えーっと、、、、確認させてくれ。HRTは、お母さんに『ボクは帰りたくなったけど、最後までやり通した』って言いたいのか、『帰りたくなったから迎えに来てもらった」って言いたいのか、どっち?』

 

HRTの答えは、また、「一番!」だった。

 

HRTの気持ちや考えに、どんなシフトが起こったのかは全く分からないけれど、HRTはボクの目を見て、はっきりと言った。

 

「よし、じゃあみんなでテントを片づけている。HRTも手伝いをしてくれ」

 

すると、突然、涙を拭きながら、仲間のところに向かって猛ダッシュで駆け出していた。

 

まただ。

この瞬間に気持ちを切り替える潔さ。

 

本当に、子どもたちから多くを学ぶ。

 

続く

 

第30回グロースセミナー1日目その3

炭火を起こす。

飯盒を炭火で炊く。

ぐつぐついいはじめたら、石ころをふたの上にのせる。

頃合いを見計らって、炭火からおろして、飯盒をひっくり返す。

こういった一連の作業は、なんだかとても心が休まる。

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うまく炊きあがった

おいしく炊きあがったメシを、30人以上で一緒に食べるのは格別だ。

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高原のてっぺんにある東屋

 

夕食も終わり、HABITATを始める。

 

HABITATは、動植物の生活環境や、その生息場所のこと。

このネイチャーゲームは、そういった自然環境を言葉ではなく、身体表現でする実習だ。

誰かに無言でメッセージを伝える、ジェスチャーとも違う。

 

その自然環境そのものになって、自分の内側からのエネルギーを感じることができる。

もちろん、そんな難しいことではなく、毎回子どもたちは自由にその表現を楽しんでいる。

 

各チームで、森の中で見たふき畑の周辺の様子を、表現する。

どのチームもユニークで、観察力にたけ、そして表現力が豊かだ。

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HABITAT


 

熱を出して横になっているRKも、ベンチごと運ばれてHABITATの実習に参加していた。

 

すっかり日も落ち、満天の星がきらめいている。

 

グロースの一日が終わろうとしている。

 

HABITATの実習の頃まではまだ元気だったRKの熱は上がる一方で、「家に帰りたい」と泣きだしている。

低学年の発熱は、昨年で十分に経験しているけれども、気は抜けない。

今夜は、テントではなくロッジに宿泊させて、一晩、様子を見ることにした。

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子どもたちのテント


 

2日目の朝は5時起床。

そのことをボクから伝えて、全員で寝る時間を決める

子どもたちは、だいぶ疲れている。

リーダーを中心に、寝る時間は21:00と決定。

 

それぞれのテントに移動する。

 

リーダー4人はその場所に残ってもらい、今日の振り返りをする。

リーダーになってうまくいったこと、いかなかったこと、

チームのことで、困っていること、うれしかったこと

明日に向けて強化するポイントなどなど

じっくりと確認して、リーダーたちの一日は終了です。

 

その後は、ボクたちスタッフもミーティングをします。

イントラチームとサポーターチームの連携を確認し、お互いをねぎらう。

さらに、サポーターチームは後片付けもあり、イントラチームもミーティングを重ねる。

 

ボクは明日の準備のためにロッジへ戻り、RKの様子を確認。

 

ぐっすり眠っている。

 

長い一日が終わった。

 

続く

第30回グロースセミナー1日目その2

チーム名のテーマは「不思議な生きもの」

 

テーマは、その時のボクのひらめき。

自然の名前、動物、空の生きもの、食べ物、いままでもいろいろなテーマでチーム名を決めてきた。

 

子どもたちは、いつも想像を超えた面白い名前を考え出す。

 

そして、今回は、、、、

 

わらいどり

モササウルスネッシー

グロースオラフ

冒険かじり虫

 

いつも子どもたちの発想の豊かさに驚かされる。

もちろん、このチーム名を覚えなければならない苦労もあるのだけれど。

 

昼の弁当を食べた後は、チームごとに森に入っていく。

 

カシワ、ミズナラ、ハンノキ、ハルニレ、ヤチダモ、などなど、開拓以前からの木々が群生している。

岐阜の美濃市から開墾の一団が士幌の地に入植したのが、120年前のこと。

この原生林はその時にも手をつけることなく、そのままの姿で残されている。

 

士幌も、東京と変わらず長雨と冷夏から、突然の猛暑に襲われていた。

それでも、森の小道にはいれば、その熱さも和らいでいる。

木立からは抜けるような空が見え隠れし、

小鳥のさえずりや、木々の葉が揺れる音が、心を浄化してくれる。

 

森の中は、非日常空間だ。

特に都会に住んでいるボクたちにとって、森の中に入ることは、それだけでイマジネーションが広がっていく。

むしられたような羽が散らばっていれば、キタキツネにやられた鳥がいたことが想像されるし、いろんなカタチや大きさの糞は、その森にすまう動物たちの存在を気配を感じることになる。

 

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士幌農村自然公園。士幌農協が丁寧に管理している。

答えがいつもすぐそこに在るような現代社会において、イメージすることはますます重要になっていく。

子どもだけじゃなくて、大人のボクたちにとっても。

 

森に入るときに、子どもたちに課題が二つ与えられる。

 

森の中には、進路の案内や樹木の名前が表示されている。

毎年、低学年にそれを覚えて帰ってくる、と言う課題。

 

そしてもうひとつは、森の中にある蕗(ふき)の畑の様子を、チームで身体表現するHABITAというネイチャーゲームだ。

これは今夜の食事の後で発表をする。

 

各チームは工夫を凝らして、まだ記憶することに慣れていない1年生に木々の名前や案内板の文字を覚えさせている。

歌にしたり、頭文字で覚えさせたり。

 

ふき畑の前でも、何をどう表現するのかチームで相談しながら練習する。

 

こんなことを森の中でやっているうちに、ごく自然に、まだ出来上がったばかりのチームのつながりが深まっていく。

コミュニケーションをとったり、協力することで、名前を覚えたりお互いを知る機会になっていく。

 

森から帰ってきたチームの順番に、その課題の発表をさせる。

ボクの前に低学年の二人が座り、その後ろでチームが心配そうに見守る。

すらすらと覚えてきた言葉が思い浮かぶ子どももいれば、二つくらい答えてあとは真っ白になってしまう子どももいる。

 

1年生2年生のワクワクしながらも思い出せないもどかしさで体をくねらせる姿に、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

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森の木の名前を思い出している

後ろに控えているリーダーをはじめとするチームの面々の心配そうな様子は、チームを作ったばかりとは思えないつながりを感じさせてくれる。

 

全チームの発表を終え、15:00。

ヌプカの里に、バスで移動。

 

到着後、すぐにロッジの長瀬支配人に挨拶を済ませ、荷物を部屋に置く。

必要な着替えや持ち物を指示してから、高原のてっぺんで集合。

今夜のテントサイトだ。

 

子どもたちの何人かでお米を研ぎ(米を流し台に流してボクに叱られながら)、士幌のオヤジ富さんの起こした炭火で飯盒炊爨。

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富さん

後は炊けるまでの間に、子どもたち全員でテント張りだ。

 

テント張りも時間を決めてやる実習のひとつ。

全員で協力しながらひと張りひと張り丁寧に張っていく。

 

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誰もいない、この場所でテント設営

その間に食事チームのスタッフは大きな寸胴で豚汁を準備。

 

待ちに待った食事の準備が整ったら、全員で「いっただきまーす!」

子どもたちと、次第に夕闇が迫ってくる高原で食べる飯は、本当にウマイ!! 

 

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左が貢さん、右が富さん。この二人がいなければグロースは存在しない。

 

ところが、初参加1年生のRKの様子がおかしい。

昼から少し発熱したのだけれど、いよいよ具合が悪くなってしまったようだ。

食事もそこそこにベンチに横になっている。

 

続く

第30回グロースセミナー1日目その1

30回目のグロースは、参加者21名。

 

そのうち、小学1,2年生だけで10人。

 

昨年の、小学1年生参加が5人もいるという驚き以上に、あらためて、気を引き締めて5日間を過ごさなければならない。

 

保護者の様子も、考えてみれば少しずつ変化しているような気がする。

 

いままでの保護者の多くは、

「お任せしますので、とことん鍛えてやってください」式の、少々手荒い印象があったところ、ここ数年は

「うちの子は、こうなので、こうしてもらいたいんです」とか、

「こういう子どもなんですが、どうしたらいいでしょうか?」など、相談をしてくる保護者の方が増えている。

それだけ、子どもたちを取り巻く環境が、信用や信頼に欠け、「万が一」を懸念しなければならない状況になっているような気がする。

 

その分、信頼があるからこそ、グロースセミナーへの期待感が高まっているということも事実。

それだけ、ボクの責任も重く、スタッフも神経を使うことになる。

 

でも、このことに意識をしぎすぎることは、スタッフの役割が「あずかった子どもたちの世話係り」のようなことになりかねない。

 

スタッフのグランディングは終えていたものの、出発前に「子どもたちの自立、成長を目的としていること」を、スタッフと共有、再確認して臨んだ5日間だった。

 

今回は、リートレがあったため、リートレ参加の4名とボク&千奈は、帯広空港で全員を迎えた。

 

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帯広空港

やたらテンションの高いリーダーたちの出迎えに、若干照れ臭そうに迎えられた彼らと合流し、いよいよ北海道でのグロースセミナーがスタート。

 

最初に向かうのは、士幌農協が管理する原生林、士幌農村自然公園。

北海道でも原生林が残っているのはだいぶ少なくなっているらしい。

 

11:20 農村自然公園に到着

すぐに、5分間チャレンジ。

そして、セットアップで、散々苦労したグループ決めだ。

 

ここでは、グループ作りの条件はもっと厳しくなる。

北海道での実習はすべて、何かしらの危険が伴う。

そのため、年齢、男女、初参加かリピーターか、など、詳細な条件を伝えてグループ作りをしなければならない。

まずは、グループ決めの時間を決めることから。

 

子どもたちは、慎重に話し合いを繰り返し30分でやる!と決めた。

 

「誰が決めた?」

条件反射のように子どもたちは「じぶーん!」と答える。

 

よほどセットアップで懲りたのか、ほとんどの子どもたちは、集中しながらこのグループ決めに参加していた。

 

リートレを終えたばかりのリーダーたちの意気込みが違っていたことも大いに関係があったのかもしれないけれど、なんと、15分10秒でグループが出来上がってしまった。

 

こういう時には、時間内で決まったことを承認する前に、ボクは細かく確認します。

自分の作りたいグループを作り出したのかどうか?

残りの時間(まだ半分残っている)でやれることはあるのかどうか?

15分でやれたけれど、そもそも30分と言う時間を決める時にできたチャレンジはなにか?

今後に活かせることは何か?

などなど。

 

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木陰で暑さをしのぎつつ、グループ決め。

それでも、子どもたちやリーダーの心は揺らがず、このグループでやる!と、決めていた。

誇らしく答えている彼らを、全員で承認し、グループが決定した。

 

お見事!

ボク自身があらためて、子どもたちの力を最大限に信じてあげることを学んだ瞬間だった。

低学年や初参加が多いから、と言ったことは杞憂に終わるのかもしれないと思えたほどだった。

 

子どもたちの本気に、ボクたちも本気を呼び起こされる。

考えてみれば、梅雨明け早々猛暑になったばかりで、まだ体が熱さに慣れていない子どもたちの熱中症対策や、食事のメニュー、発熱時の対応など、サポーターチームを中心に、ボクたちも本気で準備を進めてきた。

いつも以上に慎重に、注意深く。

 

本気のエネルギーは、すでにこのグロースの中に注入されていたわけだ。

 

続く

グロースリートレ その2

昨日の続きです。

 

「おまえたちはどうしたかったんだ?」

 

こういった「問題」が起きると、多くの人はその「原因」を探す。

あの人が言ったから、あの人さえいなければ、あーしてくれなかったから、、、

でも、グロースで大事にしていることは、そこに起きていることは、そこにいる全員にとっての学びであり、誰かのせいにすることではないということ。

同じ環境の中にいて、それぞれの視点から、それぞれにとって大事な学びがあるのです。

 

「おまえたちはどうしたかったんだ?」

 

ボクからの問いかけに

TKHは、

「もっとYKに寄り添いたかった。」

困っている人に寄り添いたいというのは、TKHの生来のやさしさだ。

TKHはその気持ちがあったけれど、もう一歩を踏み出せず、YKの「ほっといてほしい」という言葉に寄り添った。

自分の「寄り添いたい」という気持ちにではなく、YKの気持ちに寄り添ったのだ。

 

ただ、TKHは自分の気持ちを心の中に置き去りにしたことには気づいていない。

これは、誰にでもあること。

誰かのために、といって、知らないうちに自分のことを後回しにしたり、時には犠牲をしてしまう。

 

「YKに寄り添って、TKHは何をしたかったんだ?それで、TKHは、何を得たんだ?それが本当にTKHの欲しい結果だったのか?」

 

TKHは無言でうつむいたままだ。

 

「それも大事だけど、自分の気持ちに寄り添うことも大事だ。このグロースでその練習をしてみろ。自分の軸をもってやり通すこと、それがTKHの今回のトレーニングの大事な練習だ。」

 

ボクの言葉を黙って受け取っていた。

 

MKは、思ったこと、言いたいことがあっても言えない、、もしくは言わない。

それが彼女の癖であることは、以前から感じていた。

決して悪いことだとは思わないけれども、何かトラブルがあるたびに、居心地が悪そうにしているMKがいる。

言わないのか、言えないのか、これは大きな違いがある。

こういう時、自分をどう感じているのかを見つめるのは大事なことだ。

 

この時も、自分からは何も発言しない。

ほかの人の意見を聞いてからMKは、「私もそう思う」式の発言になりがちだ。

「どうしたいんだ?MKは」と問いかけると、「ちゃんと自分の意見を言いたい」という。

自信を持てとか、はっきり言えとか、そんな精神論を言われてもすぐにどうにかなるものではない。

「どうしたらいいのか」じゃなくて、「どうしたいのか」を探す。

 

意見を言いたいと言いながら、言わずにいることで、不満は増え続ける。

その不満のはけ口は、身近な誰かになる。

その不満を聞く人にもよるけれど、聞いた人は不満を訴える人に同情するし、一緒になって腹も立ってくる。その場にいない人までも、その不満を聞くことで不満がいっぱいになっていくのだ。

たとえば居酒屋で見かけるサラリーマンの被害者同盟みたいなもの。

上司への不満を聞いているうちに、自分もだんだん腹が立ってくるような、、、、、

ネガティブのスパイラル現象。

自分が本当に伝えたいことは何か、それに気づくことは、自分と一緒にいてあげる最良の方法だ。

 

「MK、自分が周りの様子を見はじめたら、まずそのことに気付くこと。そして、気づいたら、自分から発信する練習をしよう。いいか?」

これがMKの課題となった。

 

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ナイトハイクの道を歩く


 

ASTは、いろんな意味で有能である。

器用だし、考え方も大人びているように感じる。

でも、そのことで、自分の考えにあわない人間とのコミュニケーションや、かかわり方に差が出てくることがある。

信頼ある人間関係を作り出していくには、「共に」の意識が重要だ。

そういえば、ASTのリーダー像は「自分の考え、行動についてくるような人」だった。

確かに力強いリーダー像を描くのも大切だ。

その「自分の考え」が、いったいどんな考えであり、どんな目的なのか。ビジョンは何か、、、これから彼が直面し、学んでいく大切なことだ。

どっちが上か下かの競争以上に、この相互依存の関係を大人ボクたちも学ばなければならない。

有能だからこそ、相手を尊重することを学ぶ。

ASTには、そう伝えた。

 

 

そしてYKは、2年前のグロースでも似たようなことがあった。

都合の悪いことが起きて、そこから逃げ出して、心をなかなか開けなくなってしまう。

それがYKの「本意ではない」ことはよくわかる。

このグロースでも繰り返しているのだから、日常でもありがちな、彼のパターンになっている可能性が高い。

おまけに、そういうレッテルを周りから貼られてしまうことで、損するのは、自分自身。

YKには、「自分に向き合うこと。どんなに嫌な人間から逃げても、自分からは逃げられないんだ、いいか、自分としっかり向き合え!」ということを繰り返し伝えた。

 

ボクからのチャレンジが、彼らの心にどう刻まれたのかはわからない。 

でも、何かしらのタネになって、彼らの人生の中で育っていくことを願っている。

 

ところで、こんなことがあったのにもかかわらず、2泊3日の間、彼らが作る料理はどれも絶品だった。

 

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この日の夕食も絶品だった

 

「割烹白だし大根チャンプルー」

「割烹白だしかきたま汁」

「割烹白だしジャガイモでかすぎチーズとハートシチュー」

 

若干、白だしに頼りすぎの感もあるけれど、他にも工夫を凝らした中学生とは思えないほどの力量を発揮してくれた。

 

この2泊3日のトレーニングでのいろいろな実習を終え、ボクたちは、7月31日の朝、帯広空港に本隊を出迎えに行った。

 

そして、今回のリーダートレーニングは、最終日のミドルネームの実習で、彼らの心の中にしっかりと「リーダー」としてのタネが植えられたことを確認できたのでした。

  

短いトレーニングではあったけれど、いい時間を過ごすことができました。

正直、思春期真っただ中の時期に、ボクもこんな体験ができたらよかったのに、といつもながら思うのでした。

こいつら、本当にかっこよかった!!

グロースブログ まずはリートレから。その1

すっかり秋めいてきました。

 

今年の夏を思い出しながら、30回目のグロースセミナーを振り返ります。

今年もいろんなことがありました。

 

心待ちにしていた皆様、遅くなりましたが、すこしずつ公開していきます。

 

 

 

 

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2年に一度のリーダートレーニング。

今年のグロースは、このリートレから始まりました。

リートレは、グロースのリピーターで、中学2年生以上が参加できる、2泊3日のトレーニング。

グロース本隊を迎えるまでの2泊3日。

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士幌高原ヌプカ

 

ボクが、以前企業研修などで提供していた、大人向けのトレーニングを、思春期の子どもたち向けのリーダシップトレーニングに手直しをしたものだ。

 

*初めて読む方、グロースセミナーは、小中学生対象の「自立のための野外体験学習」です。北海道十勝にある士幌高原で、毎年夏に行われているキャンプ実習です。

http://www.cof.or.jp/hokkaido_growth/

 

参加者はAST、TKT、YKの中3男子3人と、中2女子のMKの計4人。

 

このリートレの目的は、

青春期を目前にした彼らが、これから高校、大学進学や社会人になっていくうえで、「自分」という存在にしっかりと向き合ってもらうため。

多くの人のためのリーダーになるというよりも、自分という人間のリーダーになっていくためのトレーニング。

 

まずは、「リーダーって、何?どんな人?」と、彼らが持っているイメージを問いかける。

ありきたりな、人をまとめるとか、引っ張るとか、そんな一般論ではなく、彼らなりに描くリーダー像をきちんと言語化することから始める。

当然、正解はないから、自分の考えをひねり出さなければならない。

 

「人がついてきてくれるように、楽しい場を作れる人」

「まとめるだけじゃなくて、楽しむ場を作る」

「まとめるのも大事。自分も楽しくてみんなも楽しめる」

「自分の考え、行動についてくるような人」

 

彼らなりに考えて紡ぎ出した言葉。

これを、ボクは、あれこれ正すつもりはまったくない。

大事なことは、これをこのリートレで実践し経験をしていくこと。

「言っていることと、それを生きること」を学んでほしいのです。

そのうえで、また自分なりのリーダー像が生まれていくはずだから。

 

世の中の、既成概念や、一般論ではなく、自分なりの考えや実践を経験する場がグロース。

そのための環境を提供していくのがボクの役割です。

 

そんな中で初日の夜のこと。

さっそく、彼らにとっての大きな学びの瞬間が訪れました。

 

リートレでは、食事は自分たちで作ります。料理が得意だ、というメンバーもいて、4人で楽しく通り始めた。

ボクと同行している千奈の分を含めて6人分。

 

しばらくして、様子を見に行った千奈から、

「4人に何かあったらしくて、YKが料理をせずに部屋にこもっている」と。

 

グロースでは、何かしらの問題が起きたときにこそ、大きな学びを得ることが多い。

 

さっそく料理部屋に行って確認。

「YKがいないけれど、何があったんだ?」

すると、3人は神妙な顔つきで説明を始める。

「YKが、自分も料理を作りたいと言ったんだけど、軽い冗談?を言ったことで、YKが機嫌を損ねてしまったらしい。」とAST。

謝りにも行ったけれど、

「食事はいらない。次のトレーニングが始まったら参加するからいい」と言われたとのこと。

 

ボクはさっそくYKを呼び、4人全員からヒアリングをする。

 

勝手な解釈や憶測を避けるために、全員の前でひとり一人から聞きます。

でも、それは原因探しをすることが目的ではありません。

誰が悪くて、誰が間違えているのかは全く関係がないのです。

 

大事なことは、今まさに起きていることが、自分たちの欲しい状態なのかどうかに気付くこと。

彼らは、それは欲しい状態ではない、と言う。

そうなると、一般的には、「じゃあ、どうすればよかったのか」という反省モードの話になりがちだけれども、グロースでは、「本当はどうしたかったのか」を考えてもらいます。

 

YKは、「自分も料理を作りたかったのに、お前は必要ないと言われて、、、」

ASTは、「軽い冗談のつもりで言って、YKが怒ったから謝りに言ったけど、、、」

すかさずYKは

「サッカーボール蹴りながら謝っても許せるわけじゃないじゃないですか!」

 

こういうケースだと、

「原因」追究。

たとえば、ASTの軽い冗談と謝り方。

ありがちなのは、原因を作ったASTに謝罪をさせる。

さらには、途中で料理を放棄したYKにも反省を促す。

残りの二人にも、何かできたことがあるだろう、と考えることを促す。

これで一件落着。

握手でもさせればそれでおしまい。

 

でも、これでは、学びにはなりにくい。

グロースでの学びは、いい悪いを見つけることではないし、反省させたり悪いと言う点を改善させるためでもない。

 

実は、ちょうど料理を作り始める前のトレーニングで、大事な学びを彼らはしていました。

何かを目指すときに、「そのチームのつながりが、結果を作り出す」ということ。

言い換えれば、チームのつながり度合いの、そのままの結果として目の前に現れるということだ。

 

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実習をやり遂げた達成感

どれだけ、本気で向き合い、お互いを認め、ビジョンを共有し、与えあうかかわりであるのかどうか。

うまくいかなかったときに、その原因を探すのではなく、あらためてチームのつながりにきちんと向き合ってみるということ。

 

4人にとって、お互いに向き合い、真のつながりを作り出していく、とてもいいチャンスが訪れたのです。